2007年3月  1面
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     ナルクが包括支援センターの現状調査
        ●本来事業に手が回らない支援センター
        ●求められる継続支援ができるボランティア
        ●支援センターは予防プラン作成に忙殺

 包括支援センターのスタート
 2006年に大改正された介護保険の目玉は地域包括支援センターの新設である。狙いは増加し続ける介護認定者の抑制、なかでも約60%を占める「要支援と介護度1クラス」の介護度進行を遅らせることと、今は元気だが今後要介護状態に陥りそうな高齢者の支援施策を地域ごとに取り入れることにあった。
 包括支援センターは中学校区2つ程度の地域ごとに設置され、その運営責任は市町村が持つことになったが、業者への委託も可能としている。
 センターの基本的な機能は図1の通り新予防給付と介護予防事業の2つに分かれている。前者は今回の改訂で新たに区分された「要支援1、2」の対象者に予防給付のケアプランをセンターが作ることになり、これが大きな負担になっている。また後者が「任意事業」に位置づけられているのが問題である。制度改正の趣旨から考えると「介護予防」の方が重視さるべきで、その際地域に存在するNPOやボランティア団体のインフォーマルサービスを如何に組み込むかが鍵になる。
 1つの包括支援センターには@主任ケアマネージャーA保健師B社会福祉士の最低3人の人員を置かねばならず、これらの運営費用は介護保険の2%を財源としている。市民の健康管理・疾病予防に大なり小なり人と金を使ってきた市町村が、これらを含めて介護予防に力点を置いて総合的な施策をたてて、どれだけの予算を投入するかが問われるところとなろう。
 包括支援センターがスタートしてほぼ1年が経過して、現在どのように活動がなされているのか、どこに問題点があるのか、などを知ると共にナルク各拠点が地域包括支援センターに、「どのようなお手伝いができるのか」を掴むことを目的に、新年早々全拠点に調査を依頼した。

                    ナルク82拠点の調査結果
 早速調査を実施した拠点数は82拠点で、先ず市役所や役場を訪問、地域包括支援センターの概要と市の取り組みについて聞き取り調査をし、次いで地域包括支援センターにも調査に伺った。
  85%が運営委託
 調査市町村数は左表のように94、傘下包括支援センターは823、調査した市町村の総人口は3327万人なので、1センターの担当人口は4万1千人である。包括支援センターの運営は行政の直営が14%、一部直営が0・6%で85%が全数委託と圧倒的に多い。また委託先は社協が9%と少なく、医療業者など民間が87%であった。
  介護予防や権利擁護をやりたいが
 包括支援センターの職員は熱心で、制度改正の主旨もよく理解している。しかし人員不足と予防ケアプランの作成に時間がかかりすぎるのが悩みとなっていて、現在の問題点を聞くと沸騰するようにたくさんの意見が出された。図2でそれを纏めたが、予防給付プランの作成に追われて介護予防や相談・権利擁護などの本来業務ができないが28%、 委託する場青の件数が上限8件に抑えられているのと報酬単価が安いので委託先が見つからず結局内部でやらなければならないが21%、合計すると49%が予防プランをこなすだけで精一杯という現状であった。
 人員不足はともかくとして、先ず委託件数の制限を緩めることと報酬単価の引き上げが急務である。
 しかし明るい展望もある。予防支援事業を地域に「早くきめ細かく広めていきたい」と強い意欲を示している行政や、従来からも熱心に取り組んでいる所が数多く見られたことだ。

  ほしいボランティア
送迎 ・見守り ・庭掃除 ・体操指導
 今後予防活動を展開していこうとすれば、どうしても地域の諸団体、ボランティア組織、NPOとの連携が不可欠になる。健康づくり、介護予防は継続して行わなければ効果が出ない。そういう意味では事務所を置き、コーディネーターを配置して責任をもって恒常的に活動してくれる「ナルクのような組織を地域でたくさん作る必要がある」と殆どの支援センターが答えている。
 草津市では各種サロンを70ヵ所予定だがボランティア団体に大きな期待を抱いており、そのためのサポーター養成講座を開くという。
 どの包括支援センターでも予防のためのサロンが用意されているが、人手不足なのと企画力がないのでこのボランティアのニーズは高い。
 高槻市では体操指導の講習を受けた人に予防教室の運営を委ねる計画を立てている。神戸市では小規模多機能施設でのレク活動の指導者を求めている。
 今回の制度改定で要支援1,2の給付限度額が下げられたので、日常生活が困難な独居高齢者のケアプランに有償ボランティアでもよいから取り組みたいという声が多かった。そのサービスとしてあげられのは病院への送迎・家事援助・話し相手・見守り・ゴミ出し・趣味の活動への同行・庭掃除などである。
 強いナルクへの期待
 行政の福祉担当や社協と常に連携を保ち、時間預託助け合いボランティアや奉仕型ボランティアを行って地域の評価を得ている枚方交野、小山、栃木、岡山東備などでは支援センターの方から声がかかり、数多くのボランティア支援が行われている。しかし大多数の拠点は介護保険が実施されてから、身体介助、家事援助などのボランティアが介護保険にとられて減少している。しかし保険給付の見直しや低減がなされ、さらに今回の地域包括支援センターの開設によってナルクの担えるサービスが増大している。これを適確にキャッチして各拠点が最低月100時間の時間預託ボランティアを実行することは極めて容易になっている。
 要は拠点のリーダーやコーディネーターが包括支援センターに積極的に足を運ぶことである。そしてボランティアを依頼されたら先ず引き受け実施することが大切である。そうすれば必ずナルクが地域でなくてはならない頼りになる組織として認知される。いまその時期に来ているのである。


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