2007年2月 1面
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         飽食の時代になぜ?
                 食抜きの子どもが全国で激増
          
           ◎新宿CGC拠点の活動を中心に食育の問題を考え
 「食育」という活字が新聞を賑わしている。国民の食生活が乱れているのだ。特に子どもの食事が大きくバランスを崩しているのが問題だ。食品の安全にも赤信号が灯っている。政府もこの現状に危機感を抱き一昨年7月、「食育基本法」を策定し、食生活の改善に本格的に取り組み始めた。
 ナルクでも子育て支援の一環として、しばしばこの問題に警鐘を鳴らしてきたが、新宿CGC拠点は結成以来「食育問題」に拠点を挙げて取り組んできた。このCGC拠点の活動にスポットを当て食育の問題を考えてみたい。

               食抜きの子どもが全国で激増

 わが国は世界で最も豊かな食を享受しているにもかかわらず、健全な食生活とは程遠い日常が国民の中で繰り広げられている。
 食に関する知識を身につけ、健全な食生活を実践できる人間を育成することを目的に、「食育基本法」は議員立法として提案され、平成17年7月に施行された。そして昨年3月には「食育推進基本計画」が定められ、毎年6月を「食育月間」、毎月19日を「食育の日」と定め、地方自治体による積極キャンペーンも始まった。
 その背景には子どもたちの間に広がっている「5食」(誤食)という問題があった。
    1 孤食(一人で食べる)      2 小食(食べる量が少ない)
    3 個食(おのおの勝手に)     4 粉食(粉を主食に)
    5 固食(好きなものだけ)
という5つの問題点である。

                    ◎朝食を作らない母親

 朝食を作らない母親が増えているという。こうした親の問題もあり朝食を食べない子どもたちが20%もおり、これらの子は午前中の授業の集中力を欠いたり、切れやすい子になりやすい、という調査結果が出ている。一人で食事をするケースが多いため食事のマナーを知らない子どもが増えているのも問題だ。10代女性の70%がダイエットを目的に食生活のバランスを崩しているという現実もある。
また食に関して根拠のない情報が多すぎて「好き嫌いだけで食品を選択」していたり「何を選択したらよいのか分からない」という悩みも広がっている。
 一方、食料自給率の低下は歯止めがかからず、その約6割を輸入に頼っているのが現状だ。
反面、食べずに捨てられる日本の食品の量は、バングラデッシュの食料の消費量に匹敵するとも言われている。
 この食の危機的状況に立ち上がったのがナルク新宿CGC拠点である。

                ◎新宿CGC拠点の食育の取り組み

 この拠点は「(株)シジシージャパン」という企
業が母体になっている。この会社は商品開発、情報・物流の共有で、大手スーパーと互角に競争していこうという異体同心の趣旨で設立された中小スーパーの連合体である。
 ここのOB会がナルクの理念に共感し、平成16年にナルクに加入、「新宿CGC拠点」が誕生した。
 代表に柏木唯男氏、事務局長に仲野嘉一氏を選出、早速食育の問題に取り組み始めた。
 まず手がけたのは「親子の料理教室」。商売柄食品メーカーと協働するのはお手の物だった。宣伝はスーパーのチラシだけだったが、20名の定員はアッという間に満員になった。工場見学をセットにしたため、子どもたちはその食品が出来上がる工程にも大いに関心を持ってくれた。肝心の料理教室はメーカー側に立派なキッチンが備えられているのが最大の強みであった。栄養士の先生を講師に、内容の充実した料理教室を開くことができた。
 初年度には3回、2年目には小田原などの遠隔地を含め20回以上、そして昨年は37回のイベントを開催したのだからその熱意の程が伺える。
 中身も「親子料理教室」の枠を越え、幅広い内容が盛り込まれるようになった。
 例えば7月8日は「親子で楽しむ料理教室、バスで行く収穫ツアー」と銘打って千葉県の農場に赴いた。そこで人参やジャガイモを親子で収穫し、子どもたちにも取れたての野菜でカレー作りにチャレンジしてもらった。
 途中のバスの中ではタイアップした食品メーカーの課長さんが食の授業を行ってくれた。
「食品は血や肉になる赤、体の調子を整える緑、エネルギーの基になる黄の3種類に分かられます。ジャガイモは何色の食品ですか」などのクイズで勉強した。
 農場に着くと一行はまず野菜の栽培について学んだ。初めて見るニンジンの花に大人も興味津々。
 そしていよいよ収穫。「ワーこのニンジン3つ股!」など歓声が上がる。お母さんに手伝ってもらいながら子どもたちもジャガイモの皮むきに挑戦、カレーを完成させた。
 柏木代表は「食育とは『食事で育つ、食事で育てる』と言うことです。料理教室は親子の絆を強めるという子どもに対する教育だけでなく、子どもを通して食に無関心なお母さんたちを啓蒙することに大きな意義があるのです」と語っている。

                   ◎食をめぐる問題点

確かに最近の若い母親には問題が多い。
彼女らはスナック菓子世代と言われ、成長期に極めて不健全な食生活を送っている(責任は60代、70代の世代にあるが)。
 健全な食生活についての知識も乏しい。 ある小学校の教師は給食時に「いただきます」の唱和を指導できないと嘆く。強制すると若いお母さんたちが学校に文句を言いに来るという。「給食費を払っているのだから、食べるのは当然だ」という論法らしい。何をか況やである。
 そのほか食を巡る問題点として、子どものしつけの問題がある。箸の持ち方、食事の手伝い後片付けから学ぶこと、恵みに感謝する心、切れやすい子ども対策など、問題は山積している。大人の問題としては食事のバランスや昨今話題のメタボリックシンドロームがある。食の安全、わけても添加物の問題は看過できないところに来ている。

                     ◎危険な食品添加物

 食品添加物に詳しい安部司氏はその著書の中で「廃棄寸前のクズ肉も添加物でミートボールに生まれ変わる」とか「コーヒーフレッシュの中身は水と油だけ、ミルクは一切入っていない」など添加物の現状を暴露している。安部氏は「食品業界は情報開示が極端に遅れているため『添加物=毒』という誤った図式が消費者に広まっているが、利便性という光の部分がある反面、危険な添加物が多いことも事実だ」と言っている。
 ナルク「高槻・島本拠点」の水川明氏は永年豆腐にこだわり、オカラの出ない「大豆丸ごと豆生」の企業化に成功させているが、秘訣は無農薬の大豆と無添加のニガリだったという。我々消費者は今後とも添加物には、さらに関心を持たねばなるまい。


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