2006年10月号  1面

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自立のための「サロン」で社会貢献
全国で高齢者の居場所づくりが活発
新介護予防の柱に育つか
 ナルクはシニアの団体として「自立」「奉仕」「助け合い」の理念を掲げているが、「自立」という概念は言うまでもなく「誰の助けも借りずに、高齢者が日々元気に生きていこう」ということである。そのためには経済的自立と心身共に健康であることがまず第一。
 各拠点では時間預託の助け合いと奉仕型のボランティア活動に加えて、ハイキング、ボーリング、ゴルフなどで身体を鍛え、いろいろな趣味の会で心の健康を図っているが、中でも最近注目を集めているのが「ふれあいサロン」である。  
 ナルク豊中・池田・箕面拠点の「わかばサロン」は「居心地の良い場所、何でも気軽に話せる場所、誰もが主役になれる場所、そしてお互いが支え合っていることを実感できる場所づくり」を運営理念に、会員同士のたまり場としてスタートした。しかし2年を経たいま、会員外のシニアにも広く開放されて地域における高齢者の楽しくて健康な居場所になっている。このようなサロンづくりがナルクの全国各拠点だけでなく様々な地域にも徐々に増えつつある。 
 今年4月の介護保険の改定で、給付の節減のために包括支援センターが設けられ高齢者が要介護にならないための予防策を行わねばならないことになったが、サロンはその決め手になるのではなかろうか。

わかばサロン 誕生の秘密
 「活動できなくなったので、ナルクを退会します」
 ある日、豊中・池田・箕面拠点(わかばの会)にこんな手紙が舞い込んだ。代表(日比野昌弘氏)はじめ運営委員一同大きなショックを覚えた。
「そんな時こそナルクじゃないの」「我々は活動、活動と言い過ぎたのかな」「もっと、ざっくばらんに話せる会があってもいいじゃないの」 そんな会話から「わかばサロン」は生まれた。
 一部の人が仕切る会ではダメだ、皆が主役になるはどうしたらいいのだろう。 延べ数十人が意見を出し合った。その結果
   ・毎月テーマを設定しよう
   ・発言の場を皆に与え よう
   ・皆で歌を歌おう
   ・毎月コーヒーマスター とウエイトレスを決 めよう
   ・会費は300円(但し 誕生月の人は無料)
 などの基本コンセプトがまとまった。
「いい大人が誕生会でもないんじゃないの「5,6人来たらいいとこかしら」「何回続くやら」悲観的な意見が圧倒的だった。 色々な意見が飛び交うなか、平成161222日、第1回のサロンがオープンした。会場は38名の会員で溢れた。全ては杞憂だった。
 行くところがある・会う人がいるすることがある・ なんて素晴らしいことだろう
 参加したある会員の声だった。

日本の元気はナルクから
 年が明けた1月の会には44名が集まった。評判を聞いて、全国の拠点、近隣の行政・社協からも問い合わせが増えはじめた。電話が鳴ると世話役は「ぜひ一度見に来てください」、と誘った。
 豊中の社協が「ボランティアトレーニングコース」の体験学習の場としてサロンを取り上げてくれた。
 豊中市の職員、箕面市の社協、池田市の特養関係者、ボランティア団体のリーダーなどの参加で、近隣での知名度も上がった。
 その陰にはスタッフの努力があったことは言うまでもない。さらに「一人暮らしの地域の高齢者などにも呼びかけて、地域に開かれたふれ合いの場にしよう」というのがスタッフの願い。外部の参加者からはこんな感想が寄せられている。
「皆さんがとてもリラックスされている様子に感心しました。外部の初めての参加者にも入りやすい雰囲気です。当番制で動いていると聞いて感心しました。お互いを認め合って自主運営をすることは組織の強みになると思います。和やかなサロンの中に、力強いパワーを感じました」(箕面市民活動センター長)
 「会員の皆様のパワーに圧倒され、逆に元気をいただきました。皆さんのこの元気がある限り日本は安泰だと思いました。高齢者が元気になれば破綻寸前の医療保険や介護保険も立ち直れます。『日本の元気はナルクから』、皆様にこの言葉を贈ります」(特養理事長)。
 日比野代表も「サロンは大きな社会貢献です」と胸を張る。
「ナルクの真の目的は自立だと思います。我々が支え合って自立して生きていくことが大きな社会貢献に繋がるのです。この支え合いの場がサロンです。皆が楽しく生きて、介護保険のお世話にならない人生を送りましょう。
 今後の課題ですが、地域の包括支援センターにも協働を呼びかけるつもりです。いまセンターはケアプランに追われ、一方で予防、予防とかけ声をかけるのが精一杯のようですがナルクと共同で居心地の良いサロンを作るよう、全国の拠点からそれぞれの地域包括支援センターに提案してみませんか」

全国各地の拠点では
 筑豊では最近「映画サロン」が誕生した。
 市内の映画館とタイアップすることで、会員は特別料金で映画が見られるようになった。
 第1回の例会は8月21日に行われた。参加者は女性ばかりだったが、映画はアニメの「ゲド戦記」を鑑賞した。映画館からポップコーンと飲み物の差し入れがあり一同大感激。
「劇場映画は家のテレビと違って臨場感、迫力が違いますね」
 コーンを口一杯にほおばりながら参加者からはこんな感想が。
 映画鑑賞の後は近くの喫茶店でおしゃべりタイム。映画の話から最近の世相談義に花が咲き「今度は男性も誘いましょうね」と青春に戻った気分で、サロンは盛り上がった。
 似たようなサロンが大阪にも誕生した。
 名付けて「栄養映画サロン」。世話役の三木正八郎氏は若かりし日は大映のニューフェースという経歴の持ち主。
 わざわざ時間を調べて映画館に足を運ぶのは面倒だ、一人では行く気がしない、など運営委員会での雑談の中からこのサロンは誕生した。
 まず会員を募り、三木さんの映画の裏話などを聞こうというところからスタートした。映画鑑賞のあとに懇談の時を設けるのは筑豊と同じ。
「将来的には近隣の拠点にも呼びかけたいと思っています。映画の自主製作が最終目標です」と三木さんの夢は大きい。
 少し中身は違うが市川には「歌声喫茶」のサロンがある。すでに10回の実績をもち、毎回百人以上参加するという大サロンである。大きな声で歌うことで皆の気持ちが一つになるという。暖かい居場所づくりの成功例であろう。
 札幌が計画しているサロンは毎日開催するというのだから、さらにスケールが大きい。
 その名も「シニアサロン・さくらんぼ」。毎日10時から16時まで札幌拠点の会員がサロンに詰めて、「パソコン教室」「男の料理教室」などを開催、地域密着型の高齢者の引きこもり対策サロンを目指す。「事務所を飛び出し、外へ打って出る攻めに転じます」と、八百坂代表も強気の姿勢。現在札幌市に対し補助金を申請中。

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