2007年4月号  1面

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ナルクが各政党に公開質問状

 高齢者の声を代弁
   年金・医療などの会員アンケートを添えて

 ナルクは去る3月22日、自民党をはじめ公明、民主、共産、社民などの各政党に対し、公開質問状を手渡した。高畑会長・河口専務理事などが各政党を回り4月30日までに回答いただくようお願いした。夏の参議院選挙で各高齢者が投票の参考にしようという意図である。
 本紙は昨年11月、高齢者イジメの税制改革に対し「怒りの声」を特集したが、その後1200名の会員にアンケートを行い、このほどその結果がまとまった。年金・医療・介護・消費税など幅広く尋ねたが、高齢者の多額の税負担の実態が明らかになった。今回の質問状にはこのアンケートの結果を添えて提出した。
 公開質問状とアンケートの主な内容は以下の通りであるが、ナルクは今後も高齢者の声を代弁する団体を目指し、政策提言活動を続けていくつもりである。
公開質問状の内容を決める会議は、3月10日午後5時から本部会議室で開かれた。ナルクの政策審議委員として岡本祐三ナルク顧問(国際高齢者医療研究所所長)、小畑雄治郎ナルク担当弁護士(大阪府人権擁護委員会委員長)も加わり、アンケートを元にして委員一同熱心に審議した。決定した公開質問状の全文と引用したアンケートの一部を紹介しよう。

 公開質問状

私たちは高齢者の声を代弁するNPO法人のボランティア団体です。高齢者は今、ここ数年重ねて実施されてきた定率減税の半減、老齢者控除・配偶者控除の廃止、公的年金の控除の見直しなどの税改正、医療費自己負担額、年金保険料、介護保険料のそれぞれアップなどの社会保険料の見直しにより、正しく生活を脅かされております。
 今夏行われる参議院選挙に当たり、私たち高齢者の清き1票を高齢者が豊かに安心して暮らせる政策を実現しようとする政党に投じたいと思い、別紙質問状の通り質問いたします。(賛成・反対でお答えください)
 1、 年金制度は法制化されている「現役世代収入の50%」を堅持すると共に国民年金、基礎年金の給付額を12万円程度に引き上げ、原資については消費税を10%とし、累進    課税を50%以上に引き上げる。
 2、 生活困窮者の医療費を無料とすると共に、低所得高齢者に対する高額医療費の自己    負担限度額を引き下げる。
 3、 介護保険第2号保険者を20歳から64歳までとすると共に、第1号保険者の所得に応じ    た保険料割合を引き下げる。

公開質問状作成に当たって

 【政党に提出した公開質問状には、この文書を添付したが、紙面の都合上一部を割
 愛・変更した。】

○ 年金制度について
 年金は約束された現役世代収入の50%は堅持すべきです。 また国民年金、基礎年金の給付額6万6千円は生活保護費を大きく下回っています。生活保護費並みの12万円程度の給付を考えるべきであり6万円程度の年金では介護老人福祉施設にも入れず、結局生活保護を受けて税金のお世話になることになります。社会保障の主旨からいって国民年金、基礎年金の給付額見直しは当然だと思われます。
 アンケートの集約結果では年金の額については「かなり不足」「すこし不足」と答えた人が87%に上がっている。、老齢基礎年金の給付額が生活保護費を下回ることについて85%が「おかしい、是正すべき」と回答している。 

○ 医療費について
 現役と同程度の収入が見込まれる高収入の高齢者が自己負担3割となりましたが、これは収入面にのみに、とらわれた対策です。高齢者は現役と違って、通院や入院のリスクを背負っているため総医療費の支出が現役より多くなります。この支出の差を考慮すべきです。
 生活困窮者(年収150万円以下)の医療費は「生命危機回避」の視点から保険でなく税金でまかなう制度を新設すべきでありますし、また高額医療費の自己負担限度額を70歳以上で年収150万円以上300万円以下の者に対し、入院は1世帯で月額2万円、外来は個人で8千円として、日本国民であれば生命の危機にさらされる病気になっても、安心して治療が受けられる国にすべきです。
 アンケートでは現在の医療費支出について、約1割が「かなり重い」、4割が「やや重い」と回答。
 単身世帯では月額医療費が1万2千円、夫婦のみの世帯では2万4千円を超えると「かなり重い」の割合が急激に高まる。

○ 介護保険について
 保険料と税金半々で賄うわが国の介護保険制度は、他の国では見られない優れた制度と考えますが、高齢者の増加に伴い要介護者が年々増えていく中で、保険料の負担が高齢者に重くのしかかってきています。40歳から64歳の第2号被保険者を20歳から64歳とすると共に、第1号保険者の保険料を段階毎に引き下げるべきです。
 アンケートでは介護保険料の1世帯月額支払額は「7千円から1万円未満」「1万円から1万5千円未満」がともに23%、負担額の全体平均は月8100円。


○ 税制について

 82兆9千億円の国家予算の中で、今年度は30兆円に及ぶ借金を返していかなければなりません。景気回復に伴う税収の伸びと、徹底的な歳出削減がポイントでしょう。そして持てる者が持たざる者を助ける所得収入の再配分により、本来の国の使命を果たしていくという大原則に立つと、日本は所得税の累進課税が十分働いておらず、諸外国に比べて最低です。累進課税の限度額を諸外国並みに50%以上に引き上げることが必要です。
 消費税も5%程度引き上げて、10兆円程度の増収を見込み、社会保障の一般財源とすべきです。さらに法人税の減税は労働者に対する配分の基準、労働分配率が確立されていないので、当分は見送ることとし、社会保障の確立が見定められてから実施すべきと考えます。
 増税ばかりが歳入政策でないことは言うまでもなく、政府や官僚の無駄遣いをなくして、歳出を減らすことで高齢者の生活に対する安心感も生まれ、それが消費支出を高め、経済成長に寄与していくことは言うまでもありません。「ボランティア認知法」を議決実施すれば、税金がかからなくなりますから私たちボランティアが行っている無償の福祉活動は、さらに活発になり地域コミュニティ自立活動によって要介護高齢者が減り、医療費、介護保険の支出を減らすことにつながります。
 アンケートでは社会保障の充実と次世代に借金を残さないために、と言う目的のために消費税を上げるべきか否かについて尋ねたが「10%前後に上げるべき」と「上げるべきではない」がそれぞれ4割強あった。
 アンケートは40頁近い膨大なもので、到底全てを掲載できませんが、閲覧希望の方はご相談ください。
 次頁下段に大阪大学大学院教授・堤修三先生と、ナルクの田邊副会長の関連記事を掲載しました。
 堤先生は介護保険法生みの親と言われた方です。大阪大学大学院教授、社会保障政策論がご専門です。

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