2015年12月号  

華僑と呼ばれ海外に出て活躍する中国人は、横浜の南京街に見られるように、各国の主要都市に集団で居住し、経済活動を展開し成功を収めている。日本人街には、それほど顕著な成功例は少なく、ロサンゼルス市のリトル東京を挙げるのが精一杯であろう
▼さてそのリトル東京の近くに「全米日系人博物館」がある。この博物館で最も有名な展示物は、第2次世界大戦当時、日本人を全員強制的に収容所に入れた時の写真や証拠品である。ナルクUSAを設立した時にも案内され、「当時日本人を強制収容したのはアメリカの大きな失政であった」という話を説明員から聞いた
▼ナルクUSA10周年の際、再訪問したが新しい女性の説明員は資料を揃え、論旨を明確にしてアメリカ政府の失政をさらに厳しく追及していた。この博物館の運営には政府の補助金も出ているそうだが、この女性の勇気には頭が下がった。アメリカ人の立派さに比べ日本は・・・考えさせられる一幕であった。(高畑敬一)

2015年11月号  

今年のナルクの事業計画の一つは会員1万人増強キャンペーンであり、二つ目は行政が全国的に推進する地域包括ケア新事業への積極的参加である
▼前者については6月~8月に実施したが、通年ベースで行われている会員の増加数を大きく上回ることができなかったので、引き続き第2次キャンペーンとして、明年3月まで継続実施することとした
▼第2の地域包括ケア新事業への参加は、3つの選択肢をナルクは用意している。そのうちの一つに、「地域の方々がナルクの会員になってサービスを受ける」という道がある
▼ナルクの会員になった方が、やり甲斐、生き甲斐が感じられるはずであるし、将来、利用者に留まらず、ボランティア提供者になれる道が開かれている。会員になれば会員同士の絆ができて、皆が頼りになる存在になる。もちろん同好会活動を楽しめるというメリットもある。「ナルクに入会してサービスを受けた方がお得」と強調してもらいたい。 (高畑敬一)

2015年10月号  

10年前、団塊の世代が定年を迎える頃に、ナルクは会員外を対象に老後の意識調査を行った。回収率が72.5%と高く世間を驚かせた。注目は「定年後の働き方」である。65歳以上の高齢者の半数以上が定年延長を期待したのに対し、定年前の50歳代は「定年を延長するよりも、月収20万円程度もらって働きたい」と、企業に冷めた態度を示した
▼また社会参加活動について、団塊の世代の30%は、「定年後はボランティア活動をしたい」と答えた。ただし「自分の時間にあった活動があれば」「自分にできそうな活動があれば」の条件付きである。これは今年行った「65歳以上の会員外調査」でも、「80歳代の会員調査」でも同様の傾向が見られた
▼もう一つ10年前の調査と同じ回答が得られて嬉しかったのは、年金や介護保険の負担問題である。「若い世代だけに依存しないで、高齢者も応分の負担をすべきだろう。そのためには消費税の増税もやむを得ない」という答えだ。社会感覚は健全だ。(高畑敬一)

2015年9月号  

近頃よくこんな話を聞く。「介護は家族がしんどい思いをしてやるよりも、迷わず施設に入れた方がよい。餅は餅屋なのだから」。ところが、ある高齢者団体がアンケートで「介護や看取りは自宅でやるのがよいか、施設の方が良いか」と問うと、「自宅がよい」という答えが半数を超えた
▼この結果について、ある拠点代表に意見を求めたら「うちの拠点でやっても、同じ結果になったかも知れない」という答え。ただし「本人の意見と家族の意見は必ずしも一致しない」という但し書きがついた。但し書きがつかないような日本にするために、ナルクのようなNPOやボランティア団体があるのではなかろうか
▼高齢化がさらに進んで要介護者が急増し、介護に伴う公的な人手やお金が足りなくなる時代が必ず来る。それが分かっていて「介護予防、包括ケアのような生活支援以外のスキルを伴う介護はやらせない」などと、のんきなことを言っていて良いのだろうか(高畑敬一)

2015年8月号  

 ナルクの時間預託制度は会員同士が「困ったときはお互い様」の助け合い活動を継続していくために、アメリカのマイアミで行われていた「タイムダラー」を参考に、設立以来、採り入れてきた一つのツールである
▼当初、多かった質問は「この制度は誰が保障するのか」というものだった。「会員の愛情と助け合いの精神で行うものであり、実施できる可能性がある限り、点数は利用できる」これが答えだ
▼将来にわたって存続させるためには、財政の健全化と活動者の充足が欠かせない
▼最近、「時間預託は魅力がなくなった」という話を、事務局長会議などで聞くことがある。時間預託活動を余り熱心に行っていない拠点から、こういう声が上がるのはなぜだろう
▼ナルクの時間預託は全国ネットなので、遠く離れた親の介護にも、どこへ移り住んでも使えるのが魅力だ。さらに大切なことを一つ。時間預託活動は提供者にも、利用者にもなれる無償の双方向ボランティアである。(高畑敬一)

2015年7月号  

 ナルクでは20周年を機に、武蔵野大学と提携し、「高齢者の定年後の生き方調査」を行ってきた。アンケートは大学側で作り、ナルクの会員が65歳以上の高齢者に配布、記入を依頼、回収した。回収率は98%、合計1027枚であった
▼この調査で目を引いたのが「ボランティア活動に参加する意思があるか」と聞いたところ、29.4%が既に参加していると答え、「自分の時間に合った活動、あるいは自分にできそうな活動が近くにあれば参加する」、と答えた人が872名(84.9%)にのぼったことである
▼しかもボランティアは自発的に無償でやるものだから、「預託点数と交通費があれば報酬はなくても良い」という人が6割を超えていた。日本の高齢者は健全で頼りがいがある
▼より充実した活動をしていくために、必要な知識・技術の研修を望み、活動者同士の交流を期待している極めて前向きで真面目な態度が垣間見られた。これに行政はしっかり応えて欲しいものである。(高畑敬一)

2015年6月号  

 行政の意向を汲んで、社協がポイント制を採り入れ始めた。ナルクの時間預託制度と似ているが、趣旨はだいぶ違う
▼十数年前、有償ボランティアと称する団体が、有償という名でボランティアをする2010年12月号ことに猛反発が起きたとき、その隠れ蓑に「時間預託」が使われた節がある
▼ボランティアをした時、お金をもらわず一旦点数で貯めておいて、後からボランティア事務所で、1時間数百円のお金に換えてもらうのである。すぐにお金をもらうか、点数でもらうかは「本人の自由」だったので、多くの人は、すぐにお金を受け取る方を選んだのだそうだ。点数で受け取った人の中にも、お金に換えるときに「利子をよこせ」という要求があったりして、いつの間にかこの種の時間預託は消えていった
▼もともと時間預託制度はアメリカのマイアミから始まったもので、趣旨は「会員同士の助け合い」である。それを施設のボランティア活動や同好会活動の世話役にまで広げるのは筋違いである。(高畑敬一)

2015年5月号  

地域包括ケアの仕組みをあと2年かけて作り、10年の間にそれを完成させようという厚労省の方針に対し、多くの自治体が指針を発表した。そのいくつか読んで見たが、「多様な主体」という地域のボランティア介護資源をどう育成していくかという視点が欠けているように見える
▼民生委員や児童委員、自治会役員という既成の担い手だけしか見通しがないとすれば、正に絵に描いた餅といわれても仕方がない。堀田力さんが力説する高齢者を中心とする新しい担い手の開拓、育成の具体策を明らかにして欲しい。その中でナルクは、いかなる役割を果たしていけばよいのか見解も聞いてみたい
▼阪神淡路大震災後に起きたボランティアブームを再び甦らせるには、ボランティア団体やNPOのリーダー養成講座を行政や社協、地域の民間団体が協働して実施するべきなのではないか
▼理念をしっかり持ち、情熱と行動力を持った リーダーを育成していけば、必ず実を結ぶ。(高畑敬一) 

2015年4月号  

 相続税の改正(改悪?)が行われたり、家族葬や直葬が増えるなど、葬儀の事情も様変わりしてきた。「一度専門家を招いて本部主催で終活セミナーをやったら、いかがですか」という某大学教授のアドバイスを受けて、第1回の終活セミナーを大阪中之島の中央公会堂小集会室で開いた
▼雨の中を130人もの人が集まって大盛況。「よい勉強になった」と好評の声が多かったので、次は東京をはじめ全国の主だった地域でも開きたい
▼セミナーでは「なけなしの退職金も目減りする一方だ」という悲鳴に応えて「賢い資産の増やし方」を大和証券の専門家に話してもらった。「本部は株や投資信託を勧めるのか、もし失敗したらどうするのか」と言う声の一方で、「リスクを恐れていたら低金利の預金だけで資産が増えない。さりとて株や投資信託を今から勉強するのも億劫だ。年金をどう高く運用するかと頭を悩ます国の担当者の苦労も分かった」という、まともな声も聞こえた。(高畑敬一)
 

2015年3月号  

介護保険のサービスを利用すれば費用の1割を負担することになっているが、今年の介護保険法改正によって、年間280万円以上の収入がある人は、2割負担になった。高所得高齢者にも応分の負担をしてもらうと、厚労省は言っている
▼特に異存はないが年収280万円以上を高所得者とすることには賛成できない。ナルクの会員は、ほとんど年金暮らしだが、これなら大半が高所得者に該当してしまう。基準を見直してほしい
▼ナルクの会員は、社会保障の不十分な面をボランティアで補っている貴重な高齢者だ。経済的に自立できないような状態に追い込んでは身も蓋もない
▼特養が不足して入り難いという声を以前から聞いている。ナルクの有志から浄財を募り、良い物件があれば、特養とし別組織で運営しようかという声もある。また「ナルク緑の共同墓地」を作らないかという夢のような話もある。これらの夢を実現して社会貢献するのも、一つの道ではなかろうか。(高畑敬一) 

2015年2月号  

 本部の初代副会長で後に川崎拠点の代表でご苦労をいただいた後藤辰雄さんが昨年10月30日亡くなられた(享年88歳)。お葬式に参列したが、つい最近まで大阪の代表で本部の理事だった広岡芳康さんが1月17日、85歳で人生の幕を閉じた。ナルク創生期の功労者を相次いで失った悲しみは大きい
▼特に広岡さんとはナルク設立10周年のイベントで大阪から東京まで、ゴミを拾って1か月歩き通したことがなつかしく思い出させる。二人の他に横浜の北原夫妻、大阪の上山松子さんが加わり5人の長旅だった
▼横浜からは、京都の生駒代表が東映撮影所から借りてきた衣装で、私は国定忠治、広岡さんは銭形平次に変身した。新橋から国会議事堂までは、さわやか福祉財団の堀田力さんにも一緒に歩いてもらった
▼広岡さんは本部の理事としても大きな存在だった。地域包括ケアで会員外の方にサービスを提供する時、世間並みに料金を頂くことにしているが広岡さんが生きていたらなんと言うだろうか(高畑敬一)

2015年1月号  

 10月の中旬、介護事業者を対象にした研修が開かれたので顔を出してみた。「労働力不足で人が集まらない。介護保険改正で業者 の報酬が3%~12%カットされる。介護業界は冬の時代に入る」などが話題になっていた
▼要支援Ⅰ・Ⅱを介護保険から外したのも保険の収支が予想以上に悪化したかららしい。かねてから言われているように、公的介護だ けではいずれ行き詰まる。自助・共助の社会に早く 移行しなければならない
▼さわやか福祉財団の堀田力会長は地域包括ケア支援の街づくりについて、多種多様な介護の担い手を発掘すべきだと声を大にし て叫んでおられる
▼阪神大震災の時に沸き上がったボランティア待望論を今こそ再現し結実させるべき時である。周辺の定年退職者や、子育てを終え た元気な主婦たちに社会貢献を呼びかけるチャンス。ナルクの会員に迎える時代である。会員一人が最低一人の新会員を確保する。 今年はそんな一大運動を起こそうではないか。(髙畑敬一)