2013年 12月号
近頃、電車やバスの中で座席を譲られる機会が多くなった。譲ってくれるのは中高生男女。好意を無にしてはと、快く座ることにしているが、「そんなにも老けて見えるのか」と内心忸怩たる思いがする
▼家に帰り鏡に向かってみるが、顔の色はツヤツヤして、シワもそんなに増えたとは思えない。ただ、老人らしい雰囲気を気付かない内に出しているのかも。以後、胸を張り、足取り軽く歩くように心がけている
▼一部の若者が引き起こした悪質な事件だけを見て、近頃の若者はなっていない、と嘆く人が多いが、どうしてどうして、大多数の若者は「良いところ」を沢山持っている
▼不易流行という言葉は、時の流れに沿って変えていく部分と、変えてはならない部分に分かれるが、何を変えるかは難しい。「木を見て森を見ない」人の主張ではなかろうか。ナルクでも「もうこんな事は旧い。変えねば」と転々と発言されては困る。そんな思いを強めている昨今である。(高畑 敬一)
2013年 11月号
拠点では総会・定例会を初めとし、全会員を対象にしたイベントの出席率をリーダーは気にしている。でもナルクを創った頃はそれらの出席率よりも時間預託活動
への参加率を重視していた
▼拠点のイベントは少々出席率が悪くても本来事業が良ければ問題なしとの思いからだった。出席率・参加率とも強制されるものではないが、本来事業である時間預託による在宅の生活支援や介護介助については、初心を忘れないように啓発を続け、その人にあったボランティア提供活動を絶えず考えておく必要があろう
▼それにしてもコーディネーター・代表になり手が少ないという最近の傾向はどうしたことなのだろう。町内会・自治会でも以前からその役員のなり手がなく、抽選で決めるところが多いそうだ。それでも自治会長にでも当たろうものなら、退会する事態までおきている。ナルクは自ら志を立てて入会した団体だからそのようなことはおきないだろうが、お互いに考えてみたいことである。(高畑 敬一)
2013年 10月号
気軽に集まって酒を酌み交わしながら、他愛のない世間話をしているときのこと。「酒と女は2合(号)まで」と誰かが発言すると「いや酒と女は一升(生)や」と言い返す。「酒は百薬の長と言うが赤ワインの方が健康に良い」「いや焼酎のお湯割りは血栓を溶かす酵素が多く含まれていて心筋梗塞や脳梗塞の予防になる」「その焼酎も乙類に限る」
▼「介護予防の改定で要支援T、Uは給付の対象から外されるのは反対」「いやいや保険の財政が厳しくなったから、これは当然」「そうなると、ますますナルクの出番が多くなる。提供者を増やさないと」「今までの年寄りの概念を変えていかないと、元気な80も大勢いる」「むしろ50〜50台の会員を増やすのが先決」
▼「前から疑問に感じていたのだがナルクは生活支援や施設の応援だけで良いのか。初期の頃のように介護介助でもっと家の中に入っていかなければ。そのための時間預託のはずだ。」「酒が切れた解散しょう」
(高畑 敬一)
2013年 9月号
松下幸之助が晩年、平取の山下俊彦を社長に抜擢して「四段飛びの出世」と世間からもてはやされたが、当の山下は「役員定年制」を敷いて先輩の高齢役員を一掃しようとした。その時幸之助は「人間は歳をとればとるほど生き方によって差が生じる。心を若く持って、健康管理に努め、勉強を怠らない人を一律に年齢制限で辞めさす事は会社にとって損」と反対した
▼PPK(ピンピン生きてコロリと死ぬ)はナルク会員の悲願でもある。体力は衰えても健康度は高い会員のために、続けられるボランティア先を用意しなければ・・・と、ある拠点のコーディネーターがつぶやいていたが正解である
▼設立以来時間預託ボランティアを双方向性とよんでいるのは会員が提供者にも利用者にもなるという趣旨からで、本来利用するだけの会員というのはあり得ない。寝たきりに近い人にでも提供ボランティアをしてもらうこと。そのためのボランティアニーズを探してあげる事を忘れてはいけない。(高畑 敬一)
2013年 8月号
ナルクUK設立総会に先立って日本大使館を訪れた。ところが「長州ファイブ150周年記念行事に追われて」大忙しの状況
▼長州ファイブとは1863年国禁を犯して命がけで英国に密航した5人の侍のこと。その名は伊藤博文・井上馨・遠藤謹助・山尾庸三・井上勝、彼らは強大な隣国の清(中国)が西欧諸国に蹂躙されているのを知り、日本がそうならないためには西欧諸国の優れた技術や近代文明・教育・政治制度を学ばねばと決意し渡航したのである
▼彼らを受け入れたのがUCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)のウイリアム教授。様々な新知識を得た5人は帰国後、維新新政府の中心になり大活躍
▼長州ファイブの後、薩摩藩からも19人が留学生としてUCLに渡ってきて、長州ファイブと薩摩スチューデント19人が強力な日本をつくり、日英同盟にまで発展して日本は日露戦争で勝利を収めることができた。アメリカやロシアにも留学生が派遣されたが、共通の志は「和魂洋才」。その和魂は西欧・米の人たちを敬服させたという。さて今の日本は?。(高畑 敬一)
2013年 7月号
一時は日本のあちこちで時間預託助け合いを試みる団体が生まれ、その数は300とも500とも言われた。だが、いまは殆ど影を潜め、ナルクだけが20年も預託制を続けている。なぜだろう。
▼第一は「大小を期待しない無償ボランティア」の理念を明確にしていること
▼第2は全国組織なので、点数はどこへ引っ越しても使えること
▼第3は事務処理が銀行と同様、確実で、時間が的確に個人別台帳に記録され、退会しても5年間保存されるなど信頼度が高いこと
▼第4は預託時間を引き出してサービスを受けたいときは、事務所に電話一本で済むこと
▼第5は貯めた時間は、親や配偶者のためにも使え、遠く離れて暮らす両親の介護も拠点間で手続きや後始末をしてもらえることなどである
▼問題点は、若いときに貯めた点数が年を取って使えるために新会員を常に増やし、ボランティア提供者が不足しないように全員で努力すること。誰かがやってくれるでは駄目だ。 (高畑 敬一)
2013年 6月号
人生何が起きるかわからない。会員Aさんの例
▼夫婦二人ともすこぶる健康だが、突然奥さんが交通事故にあって入院した。一週間ぐらいはコンビニ弁当で凌いだが次第に手作りの料理を無性に食べたくなり、「こんな時にナルクがある」と思いつき拠点に相談したら、親切に至れり尽くせりのサービスを提供してもらい感激
▼次にBさん。居間で立ち上がろうとした瞬間、バランスを崩して転倒、脚を骨折して両松葉杖無しでは歩けなくなったので、ナルクに買い物・食事作り等の生活援助をお願いしている。
▼二人の例を聞いてCさんは「自分は預託点数を1000点近く持っているが、一生使おうとは思っていない。人様や社会に尽くした一生の証として大切にしまっておきたいと考えていた。しかし、これからは使うことを考えないと。手続きはどうすればよいのでしょうか?」
▼「事務所へ電話一本で頼めばいいのです」と答えたが、皆さんの拠点はそうなっているのでしょうか。 (高畑 敬一)
2013年 5月号
オランダで「在宅・地域介護サービス協会」の理事長を務めているミレーナさんが4月初めにナルク本部を訪れた
▼オランダもドイツと同じく早くから介護保険を導入したが、財政的に行き詰まってきたので打開策として日本で成功している時間預託制度を採り入れ、ボランティアの大量参加でカバーしたいとのこと。以前、ロンドン大学の林教授が熱心に時間預託を調べられたのと事情がよく似ている
▼お二人とも時間預託制度の中で理解困難を極めたのが「貯めた預託時間を使わなかった時に、誰がどのように保障するのか」と言う点だった。「民法上の貸借やそれに伴う債権と違い、補償は一切無い」「愛情とふれあいの論理に基づいて会員相互のボランティア精神で行うものであり、使用する時と場所でカバーされる限りにおいて利用可能である」と定款細則の文章を示し「貯めた点数を使わないで死ねば本望」と言っている会員の話を紹介したら感動して涙を浮かべられた。(高畑敬一)
2013年 4月号
白髪のテレビタレント藤本義一と対談したのは日本の平均寿命が70歳に延びた頃だった。
「高畑さん、55歳という日本の定年制は明治の頃できて、それが戦後の時代まで続いているんですね。その時の平均寿命は50歳。平均寿命より5歳高かった。いま寿命が20年も延びた。しかし定年は5歳しか延びていない。これは労働組合の怠慢の故ですよ」
▼60歳定年後すぐに厚生年金が支給されていたのだが、2007年から3年に1歳づつ支給開始年齢が遅らされてきた。
▼政府は法律で企業に65歳まで定年延長か雇用延長、もしくは定年制を廃止して雇用を繋ぎ給料で支払うよう命じているが全社員に適用されるとは限らない報道がある
▼これを禁止すること。また殆どの企業は雇用延長の道を選び、給料も5〜7割しか出さない方針のようだが、これに対しては労組が会社と交渉を行って全額保障の賃金にすべきである。そうなれば思い切って定年廃止にまで進むのが賢い道ではないだろうか。(高畑 敬一)
2013年 3月号
ある市の社会福祉協議会が、登録されている90余りのボランティア団体に「事務所を持っているかどうか」を調査したところ「イエス」と答えた団体は一つだけ。他はイベント型の活動だけしかやっていないので不必要なのだ。勿論コーディネーターも置いていない
▼ナルクが地域拠点に事務所を必ず設けることにしているのは会員制の時間預託制度を主にやらねばならないからである。会員がボランティア活動をした時間を記録管理し、預託手帳に転記する事務作業も生まれてくる。
▼会員外からの問い合わせ・入会申し込み・預託利用の支援申し込みにも、てきぱきと応えなければならない
▼率直に言わせてもらえば時間預託ボランティアをやっていない拠点に事務所は要らない。時間預託は提供者にもなるし利用者にもなる事を前提にしているので、双方向ボランティアと呼んでいる。利用者が仮に寝たきりでも、やれるボランティアを探すのがコーディネーターの任務。(高畑 敬一)
2013年 2月号
「青春とは心の若さなり。信念と希望に溢れ勇気に満ちて、日に新たに活動する限り、青春は永遠にその人のものである」。松下幸之助70歳頃の作。サムエル・ウルマンの「青春の詩」を読み感動してこれを単文に作り直し、知り合いの人達に勧め、自らも実践した。このためか生来病弱だった氏は94歳まで生き抜いた。
▼ナルクは「ボランティアをやらせてもらって生き甲斐と健康と出会いを得る」を理念にしている。いかに歳を重ねても、人生の目標を掲げてこれに挑み、生涯現役を目指すのがナルクに集う者の心意気である
▼私は昭和4年生まれ。当たり年の巳年を迎えて改めてこれらの青春の詩の意味を考えてみた。あのキンさん・ギンさんも「後何年生きられる」かではなく「もっと長生きしてこんな事をしたい」と常に目を輝かせて、毎日家の周りを歩き健康づくりをしていたという。なのに,「老人になったので来年から年賀状を遠慮します」の類が多くなったのは残念。(畑 敬一)
2013年 1月号
今から30〜40年前は「老いたら子に養ってもらう」のが常識だった。それが「同居しないで自立して生きる老夫婦や独り暮らし高齢者」が圧倒的に多くなっている。アメリカ・フランスでは子供との同居率が3%、ドイツ2%、スエーデンはなんと0.4%にすぎない。まさに欧米並みに大変化を遂げつつある。
▼これを可能にしたのは高齢者の持ち家率で日本は欧米各国を追い越してトップの86.4%を占めている。また経済的に自立できるようになったのも要因として大きく、月平均30万円と欧米諸国を抜いている。但し収入の7割が年金
▼これから少子高齢化が益々進むので年金の給付額を引き下げるべきとの意見が出始めている。一方で若い人達から「我々が高齢になったときに年金が支払われるのか」と不安を訴える声も多い。
▼自立し始めた高齢者が今更子供の家に転がり込むこともできないのだから、若い人達の不安を取り除くためにも「年金は減らさない」と政府・諸政党はこぞって国民に約束すべきである。その為に消費税を上げるのだと言うことを明確にしてほしい。年金医療以外に消費税を使わないと腹を据えて。(高畑 敬一)
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