2012年 12月号  

 ナルク設立当初、「時間預託に魅力を感じて入会したのにお呼びがかからない」という苦情に応えて、本部が拠点にお奨めしたのが「市・町の高齢福祉課や社協のボランティアセンターに要介護者とその家族の紹介をしてもらう」という営業活動だった。介護保険がなかった頃だったので多様な依頼者が殺到した
▼その一人ひとりにコーディネーターがナルクの理念、時間預託の仕組みを説明し、先ず会員になってもらい、また点数が貯まっていない人には500円程度の寄付金を求めた。同時にナルクは「全員無償であり、家族に接するのと同じ気持ちでお世話にあたっている。安い家政婦扱いされるのならお断りする」と説いた。
▼高槻拠点では若いお母さん達の最も強いニーズである乳幼児の預かりを時間預託で受け、お母さん達も高齢会員の支援をする側になり、双方向の助け合いで成功している。そこには市の施設を利用するなどの知恵が働いているのに感心することしきり。(高畑 敬一)

2012年 11月号  

  無償ボランティア団体なのに、ナルクはなぜ年会費を徴収するのか、と言う素朴な質問を近頃よく耳にする。設立当時には必ず出た質問である。丁寧に説明して得心して貰ったものである。
▼拠点の役員に尋ねても納得のいく答えが得られないので会長に一度聞いてみたかった、と言うのである。そういえば拠点三役から「ナルクの基本をよく理解されていない」と思われる意見や質問を聞いて、失望することも多い昨今
▼毎年の拠点リーダー研修会では、ナルクの理念、組織・活動、時間預託とコーディネーターの重要性など基本的なことを、みっちり学んで頂いているので、新しく役員になられた方には必ず受講して頂きたい。
▼「60歳からの人生がその人の真価を決める。故に現役時代の数倍の緊張感をもって生きるべし」とは、実践実業家 森信三の遺訓。
▼さて年会費徴収の答えはナルクがナルクが一過性ではなく、継続型ボランティア団体で、事務所を置き、電話一本で助けてもらえるから。(高畑 敬一)

2012年 10月号  

 ここ2年間、僅かだけれど毎月ナルクの会員数純減が続いていたが、今年の5月に歯止めがかかって純増に転じたと本欄で書いたら、「それは嬉しいことだ。退会会員の減少している拠点の取り組み、成功例をもっと多く教えてほしい」とのメッセージが続々届いている
▼本号一面トップで紹介している高槻拠点の「子育て支援の新しいやり方を実行したら会員数だけでなく時間預託の若い担い手まで増えてきた」とのニュースをじっくり読んでほしい
▼私からはもう一つの良い事例をお報せしよう。釧路や枚方では顔の見える組織にするためにブロック制を敷いて交流・研修・小旅行を毎月続け、活動の単位も全てブロックに置き、事務所当番から会員の助け合いまで任せたら、退会者がうんと減り、最近は新入会員も増えてきているという
▼ここまで書いていると8月もプラス27名会員増のニュース。来年には団塊の世代が65歳になり漸く地域に戻ってくる。いよいよ本格的純増時代の到来だ。    (高畑 敬一)

2012年 9月号  

入会者より退会者の数が多く、会員数が減少していく傾向が2年前から続いていたが、今年の5月からついに増に転じた。3ヶ月間の累計では入会者数520人に対し退会者が477人、差し引き43人の純増である。入会者はそんなに増えていないが、退会者の減少が大きい。
▼会員減に危機感を抱いた拠点が、まず退会者数を少なくしようと努めたからである。ある拠点では退会を申し出でた会員に面接して「なぜおやめになるのですか」と丁寧に聞いてみた。
▼せっかく入会したが、会報が送られてくるだけで何の誘いもない。時間預託をして将来に備えたいのに何の呼びかけもない。ナルクで友達を作り楽しい毎日になるかと思っていたのに」と厳しい答えが返ってきた。
▼そこで定例会やハイキングなど全ての行事に、一人も洩れなく声をかけ誘い合わせを徹底したところ、参加者が5割を超えたという。
▼お互いに顔を覚え、友達関係を作ることが大切だ。平凡な事でも、まず実践だ。

2012年 8月号  

 東大で名総長と謳われたのが南原繁さん。京大でそれに匹敵するのが平沢興さん。関西財界の中にも数多い信奉者がいた。「シニアの生き方」として教訓になる語録があるので紹介しよう
▼80歳で第3の人生が始まる。90歳まで生きないと本当の人生は分からない。75歳から85歳までが一番伸びるときだ。生きる限り成長しよう。情熱と独創と実行により人間は成長する。人の長所が見えるようにならねば成長はない。実行のない大言壮語はたわごとである
▼松下幸之助さんも数々の名語録を遺している。その中の一つ「寝ても覚めても経営のことを考え続けないと良い経営はできない」
▼ナルク水戸の林代表はこれを自己の行動理念にした。毎朝9時から事務所に入ってコーディネーターを自らつとめた。入院後も活動について気付いたことを副代表・事務局長を呼んで指示していた。日本一のナルクを創り、6月22日78歳で逝去。事実上のナルク葬となったが、みんなで「千の風になって」を歌い冥福を祈った。   (高畑 敬一)

2012年 7月号  

株式会社でも労働組合でも定期総会の議題は必要最低限に抑えているが、無味乾燥で退屈な時間に陥りがちである。だからどうしても出席率が悪くなる
▼全員参加が建前になっているナルクの拠点の総会でも、総会成立要件を低く定めているが、それでも予め委任状を欠席予定の会員から出してもらわないと総会が開けない拠点も出てくる。そこで各拠点では議事はできるだけ短時間で済むよう工夫し、その後のイベントに魅力を持たせて会員に出席してもらえるように頭を使っている
▼亀岡・奈良・かずさ等クラブ活動の活発な拠点は日頃の練習の成果を発表する場にしているので出演者は勿論、応援のための会員も出席する。▼南横浜は地域の著名文化グループを招くので何が出るかと毎年楽しみ。今年は女子大グループによる朗読だった。第一話は岡本かの子作の家霊。第二話第三話と続き、聞き惚れた。まるで文楽の語りに匹敵するほど素晴らしかった。     (高畑敬一)

2012年 6月号  

  300年前から上演されてきた文楽は世界各国の人形劇では類を見ない立派なものだ。第一に人形が大きい。第二は舞台が大きく豪華。客席は数百人を収容できる(二階席は無し)。第三に浄瑠璃(太夫)、三味線、人形の三位一体で演じられ、100人近い大劇団で構成。
▼戦後衰退を見たので国が保存に力を入れ、国立文楽劇場が大阪に建設され文楽協会がスタートし、観客が増してきた。でも若い女性ばかり。シニア層を増やそうとナルクも預託点数を使って
高校生並みの値段で観られる協定を劇場と交わした。加えて昨年末、拠点で5人以上の団体鑑賞を企画すれば楽屋・舞台裏を見学した後、会長との食事会をセットできると会報に書いたら、数拠点が団体鑑賞を行った
▼理事会などで度々大阪に来られる江別の植松代表に一度文楽を見せたいと思っていたら急逝された。病名は食道癌(享年70歳)。北海道10拠点のまとめ役で、中山道を一緒に歩いたのが懐かしい。惜しい人を失った。(高畑 敬一)

2012年 5月号  

 「お彼岸を過ぎて積雪を見るのは初めて」と富山の親戚からの手紙。今年は北陸だけでなく日本列島全体で冬が長く桜の開花が遅れたが「今年の桜はひときわ艶やかで美しかった」の声も多く聞かれた。苦あれば楽ありか
▼社会保障と税の一体改革で、年金の給付引き下げの論調が聞こえてきたので、年金生活者の多いナルクの会員が今後も安心して無償ボランティア活動に携わって貰うためにと、野田総理と全与野党に「年金現行水準絶対維持」の政策提言書を手渡した
▼但し、財源不足なので消費税の引き上げはやむなし。またその前に国会議員定数削減と歳費の縮小、公務員の賃下げを断行することを付言した
▼また提言書には
 @高齢者は支えて貰うだけでなく、ボランティアに励むなど支える世代になる努力をする
 A自宅での看病・介護に徹し看取りも自宅で行い、無駄な延命治療は行わない等のライフスタイルの変換を盛り込んだ。医療費の大幅引き下げに繋がるはずだ。(高畑敬一)

2012年 4月号  

 身長五尺二寸・体重十六貫(62kg)。戦後、大阪堺市で開かれた学生相撲選手権大会に出場したときの選手登録である。選手の中では最も小さくて軽かった。それでも技能派で勝ち抜き、優秀選手に選ばれた
▼1950年、松下電器に就職、1958年に結婚するまでこの体重は不変だった。
ところが妻のおかげで食生活がよくなった故か、みるみる体重が増えて82kgを記録。「重役タイプの体型」になったと喜んでいたら、会社の検診で引っかかった。「このままでは糖尿病になる恐れがある」と医師から警告され、食事療法に励んだが目標の60kgまでなかなか到達しない。そうしている内に娘が大型犬を飼いだし、その散歩にあたっていると、半年で目標に近づいた。運動と食事療法の併用が効いたのだ
▼その犬も4年前に高齢で死んだが毎日1万歩のウォーキングは続けている。
犬と歩いた散歩道の四季の変化を見るのが楽しみになっている。    (高畑 敬一)

2012年 3月号  

 酒席で長野県出身者が何人かいると、宴たけなわの頃必ず始まるのが長野県歌「信濃の国」の大合唱。一番から六番まで歌うと県内の川や山・湖・道全てが出てくる。木曽義仲・佐久間象山の名前までも。全部諳んじているのに感心するが、それよりも実に楽しく嬉しそうだから羨ましくなる
▼私の郷里にもそんな歌がほしいと思っていたら「富山県ふるさとの歌づくり実行委員会」が生まれ、出席してきた。県民から募集した歌詞の選定が終わり、いよいよ作曲依頼に入る。自然に口ずさみたくなるメロディーを作ってほしいと祈る思いでいっぱいである
▼会議が早く終わったので高岡工芸(現高校)の旧友に会いたくなり連絡したら5名が降りしきる雪の中、急遽集まってくれた。5人とも元気で、足腰も丈夫。話が弾んで日本の現状を憂い、老後をどう生きるか、そして健康の話になったが、共通していたのは「隠居心を持たず生涯現役精神で人様や社会のために尽くしている」ことであった。     (高畑 敬一)

2012年 2月号  

 年頭の記者会見で野田総理は少子高齢化が進む中で社会保障を維持し、震災復興をやり遂げるには多額の金が要る、その負担を率直に国民に訴えていた。国民の理解を得る前提に議員定数の削減と公務員給与の切り下げをやるという
▼しかし消費税の増額だけではいずれ行き詰まる。デフレから成長へと経済を転換させることだ。消費の半分を占める高齢者が未来を心配せずに金を使えるように、一つには年金の給付をこれ以上引き下げないようにする。二つには医療と介護の将来不安を無くすこと。そのために4月から介護保険で実施される時間包括ケアを医師会の協力を得て在宅訪問看護にまで高めることだ。
▼看取りは自宅で行うから無駄な延命治療は避けられ医療費の大幅削減を期待できる。健康な高齢者が新しい公共の担い手になることも要件だ
▼税と社会保障の一体改革に命をかける野田内閣の支持率を高めること、それが今国民にできることではないのか。(高畑敬一)

2012年 1月号  

 新しい年を迎えると「一年の計は元旦にあり」とその年の目標や計画を立て、大書して部屋の目に付くところに掲げたりしたものだがなかなか実行に移せず、年末になると後悔。という人が多いようである
▼若い頃のある日、松下幸之助とこれが話題になった。「君、それが人間の弱いとこや。やろうやろうと思っている内に月日はどんどん進んでいく。僕は一年の計を毎日の計画行動に移している。(あした)に計画を立て、昼に実行する。そして夕べに反省する。計画通りできたかどうか。できなかったのはどこに原因があったのか。また上手く実行した時でも何かそこに反省点はないかと考えてみる。.そしてその反省点を明日の計画に活かす。これを繰り返していけば目標は必ず達成できる。僕はそれで成功した」
▼丹波篠山で行った次期リーダー養成講座の感想文を読むと、急に指名され渋々出かけてきたが、ナルクの基本が身につき、課題も見えてきた。拠点を担って改革の先頭に立とうとの情熱が湧いている。と前向き
▼後継者探しで難儀しているリーダーは、誰を講座に送るかを一年前に決め、日々その気にさせていっては如何。(高畑 敬一)