2011年 12月号  

 親が亡くなったので来年の年賀状は遠慮致しますという喪中はがきが今年も沢山届いた。大部分が90歳代で天寿を全うされ眠るように安らかな最期だったと書いてある.改めて長寿の時代に入ったことを自覚させられる
▼樋口恵子さん(高齢社会をよくする女性の会)は「人生百年の時代に来ている。人間の生き方、それを巡る制度や生涯教育について、抜本的な改革をしなければならない」と説いておられた.確かに百歳を超える人が年々三千人増えている
▼今年百歳を迎えられた日野原重明さん(聖路加病院名誉理事長)は75歳からが老人だと言い「人生目標を立てて努力すれば誰でも百歳まで生きられる」と話されている。
▼日本の高齢率が23%を超えるが、高齢者の最大の関心は健康と介護。老年学の権威、桜美林大学の柴田教授によれば、みんなの望む直角型の老化モデルの傾向は時代とともに強くなっているそうである。それを信じて今日も一万歩ウォーキング。さあ歩こう。 (高畑 敬一)

2011年 11月号  

 近頃の日本経済新聞の厚生年金に関する論調が気にかかる。高齢者の受け取る生涯年金額が若い人達の数倍にもなっている今の制度は不公平だ、現行の給付額を引き下げ、年金の支払い開始年齢を歳に引き上げるべきだと、執拗に主張している
▼しかし、ちょっと待ってもらいたい。年金は世代間の協調・助け合いを前提としている。年金が少なくなって高齢者の生活が困難になれば、また昔のように子供は親と同居して、親を養っていかねばならなくなる。
▼少々保険料負担が増えても、親が子供の世話にならないで自立してくれるのは大いに助かる筈である。それだけではない。ナルクの調査では、多くの高齢者が年金給付水準のためなら消費税を%に上げても負担を若い人と分かち合おうと答えている。そしてボランティアに参加しながら健康を得て、医療・介護費を節減して、若い人の暮らしを助けたいと願っている高齢者の多いことも知って欲しい。(高畑敬一)

2011年 10月号  

 孤独死ゼロを目指す「見廻りたい」拠点活動のアンケート結果を見て感じたことをいくつか挙げてみたい。一つは先導役の中標津が付けた名称では活動の主旨が充分活かされないないとして多くの拠点が独創的な名称を付けていること
▼二つは電話で安否を確認し、また訪問して健康状況等を把握することに加えて「買い物代行」や「病院同行」「話し相手」と自立へのサポートを行っていること.。ナルクの会員らしい思いやり・優しさが表れている
▼三つは電話をかける回数や訪問の頻度が少ないのが気になる。果たしてこれで孤独死を未然に防ぐことが可能だろうか。亀岡拠点のように対象者の健康度をチェックして頻度の高い重点見廻り対象者と低い対象者を分けるようにして欲しい
▼四つには対象者の年齢を75〜80歳以上と高くしているのが気になる。孤独死が最初に社会問題化した千葉県常盤平団地のケースでは69歳の男性が死後3年白骨で、翌年には50歳の男性が4ヶ月後に発見されていることから65歳以上を対象者にすべきではないだろうか
▼「見廻りたい」のこれからについて二つ提案させていただく。一つは緊急事態の対応をしっかり決めておく事。二つは会員外の見廻り要望があったときに受け入れること。(高畑 敬一)

2011年 9月号  

 有償ボランティア団体が出現したのが今から20年ほど前。介護保険が影も形も見えなかった頃である。「国際ボランティア4原則の無償制に反する」として既成のボランティア団体は一斉にこれを非難した
▼その頃ナルクが生まれ、時間預託が注目された。無償ボランティアを基本にして自宅からの交通費以外は一切の金銭を貰わないナルクの制度ではあるが、「提供した時間は点数にして代償を期待するから」と、社協などはボランティアセンターへの登録を認めなかった
▼そこで「自立・奉仕・助け合い」の理念にあるようにナルクは会員の助け合い(時間預託)と並行して会員外や地域社会に貢献する従来型の奉仕ボラもやる団体であると胸を張った。当時、「時間預託よりも純粋な無償ボラである奉仕活動に力を入れたい」とする会員も少なくなかった
▼東日本大震災で無償ボランティアの気運が高まっている。これを一過性にしないで、それぞれの住む地域で日常不断に行われる日本にしたい。ナルクも原点に戻る。奉仕活動点数30%を時間預託に繰り入れる制度は止めねば。    (高畑 敬一)

2011年 8月号  

 北海道帯広市は、碁盤の目のように整備された道路の幅が札幌よりもはるかに広くとられていて、見るからに清々しい。その一角に市立の保育所があった
▼開設して5年しか経っていないが園児が200名を超え、園内には野菜畑が作られ、ビート、人参、トウモロコシ、茄子、ほうれん草、アスパラガスなどが植えられている。全て園児たちが種をまき、水をやり、草取りをして育てたもの。野菜の傍らに園児の名前を書いた札が立てられている
▼指導しているのがナルク十勝の佐藤副代表。ほとんど毎日畑に足を運んで、園児との共同作業に当たっている。子供たちが目を輝かして野菜作りに励む姿がたまらなく嬉しい。時々ナルクの会員が手伝ってくれるので助かると話してくれた
▼内山順子園長は採れた野菜は給食に廻し、天ぷらや煮付けにして食べさすと喜んで食べてくれる。野菜嫌いの子が野菜好きになるなど教育的効果が出て、道でも注目されていると胸をはった。(高畑敬一)

2011年 7月号  

 名古屋駅から中央本線に乗り換えて40分あまり美濃焼の本場土岐市に着く。奈良時代に始まったと言われるこの街には今も沢山の窯元が煙突を連ね個性豊かな創作活動を行っている。
▼この土岐にナルクの拠点が立ち上がってから3年目、記念集会が企画されたので出かけた。折から日本三大陶器まつりの一つで例年30万人が集まる美濃焼祭りが行われていた。身動きもできない人混みの中で窯元や商社が破格の安値で多様な商品を並べていた
▼もう一ヵ所土岐拠点の皆さんと一緒に歩いたのがなつかしい中山道の十三峠。2年前20人の完歩隊のメンバーと記念に植えた「ナンジャモンジャ」が三十三体観音堂の横に元気よく青い芽を出していた
▼当時ウォーク隊の事務局長を務めていた後さんが5月17日急死された。死因は肺がん。71歳の若さだった。葬儀に参列して最後のお別れにと棺を覗いたら遺体の胸に彼が心血を込めて編集した「中山道完歩の記」がのせられていた。(高畑 敬一)

2011年 6月号  

 阪神大震災が起きてすぐにナルクは義援金を募る行動を3日間にわたって実行、百万円を超える金額が集まり感激したことを記憶している。街頭でのこの種の行動はナルク以外あまり見当たらなかった。これに比べ東日本大震災では学生からプロ野球・リーグ・俳優などの有名人に至るまで多彩な顔ぶれが連日義援金をと呼びかけ、町内会・同窓会・県人会とあらゆる組織で募金箱が回ってきている
▼そうした中でナルクは被災された会員を助ける目的のカンパを全会員に呼びかけているが反応は極めて高い。多くの拠点では事務所運営積立金の一部を崩してそれにプラスしている。
▼一般の義援金が中々支払われていないようなので、先ず全壊半壊の被災会員に拠点を通じて救援金をいち早くお届けした。
▼救援カンパは締め切り日を設けず長期継続して、定期総会で緊急決議した東北大震災ナルク救援ボランティア活動の現地事務所費用等に充当していきたい。(高畑敬一)

2011年 5月号  

 ナルクの会員はみんなが優しい心の持ち主ばかり,東日本大震災が起きて未曽有の被害状況が伝えられるにつれて会員の安否を気遣う電話が本部に殺到した.
▼本部は休日返上で東北・関東・北海道の各拠点と連絡をとり、被害の状況を問い合わせたが宮城拠点以外は家族を含めて死者がいないことが分かった。その宮城も4月に、ようやく全員無事、ただし流出2件の情報が入り安堵した.
▼阪神大震災の際は被災会員宅へ救援カンパ金を持参、激励し喜ばれた。この他に街頭募金で頂いた義援金は日赤にお渡しした.
▼今回も続々と温かい心の結晶が集まっている。一番早かったのがナルクUSA。復興は長引くので今後もチャリティーバザー等工夫してカンパを継続するとのメールも届けられた。ありがたくて涙が出た.
▼仮設住宅が造られ避難所も整備される。これからがナルクの出番。関東拠点を中心に全国からボランティア希望者を募って救援隊を編成したい。(高畑敬一)

2011年 4月号  

10メートルの防波堤を越えた水が街に入るや、あっという間に濁流となって車を家を流し去る。津波の恐ろしさをテレビの映像が全国に否全世界に伝えた。
▼「せめて4〜5日は何も買わないで被災者と同じ生活を営み、浮いたお金を義援金に」と考える人が多くなっている。
▼必死になって肉親を捜し歩いた末、無事を確認、ひしと抱き合って「生きてくれていただけで充分。後は何も要らない」と涙を流す映像に近代文明に酔いしれていた人間の反省と生きるべき原点を改めて思い知らされた
▼私の母が田舎で、父の葬儀の際に頂戴した香典の一覧表をいつも枕元に置き、その方に不幸が起きたときには必ず同じ金額を包んでお参りしていたのを思い出す
▼この度お世話になった国のご恩を忘れないで、将来災難が発生したら、政府はどこよりも早く行動を起こしてほしい。野党は一週間の政治休戦を声明しているが復興には2〜3年はかかる。党利党略を捨てて一大災難を乗り切る政策提携に踏み切るべき。それが世論である。    (高畑 敬一)

2011年 3月号  

 「イギリスでは増え続ける要介護者・認知症高齢者のケアを提供していくためには日本で行われている相互扶助を基盤にした時間預託制度を導入しなければならない」とケア担当のポール・バースロー大臣が言い出している
▼これを受けてイーストアングリア大学林真由美学術博士が日本の時間預託の調査に昨秋来日。全国を回った末ナルクへ来られ、本部と3拠点を取材した上で日本で最も優れた時間預託を実施しているのはナルクであると折り紙をつけられた。その理由は@ナルクの理念がしっかりしているA自主性・無償制という国際ボランティア原則で運営しているB行政やお金が絡んでいないC提供者も利用者も暖かい心で結ばれている、としている
▼16年かけて一万時間を貯め、尚元気で活動している会員の話「活動させていただき生きがいを貰っている。貯めた時間はいざというとき助けて貰える安心感。しかしできるなら使わずに死にたい」に目頭を熱くしたという。(畑敬一)

2011年 2月号  

今年はウサギ年なのでピョンと跳ねて経済が良くなると期待する声が強い。しかし安岡正篤の干支学では辛兎(かのとう)なので「基本を踏まえ困難に遭っても断固として実行していく覚悟が必要」と教えている。特に政治家・経営者にそれが求められている
▼ナルクも今年は基本に徹して活動を進める。@友達ができて楽しいナルク(顔の見える小単位の組織で)A感動して生きがいが得られるナルク(暮らしを支え合う時間預託活動に重点を)B独り暮らしになっても健康で安心が得られるナルク(見廻り隊やクラブ活動を全員参加で)
▼聖路加病院理事長の日野原重明さんが今年百歳を迎えるに当たり新しい人生のマラソンを開始すると宣言し「新老人の会の会員を1万2千人から3万人にする」「日本で初めてのアメリカ式メディカルスクールを設立」「若者の成熟を期して選挙権を18歳からとする」等々の目標を発表。その意気たるや少年のごとし。全国のシニアよ、日野原に負けるな!(高畑 敬一)

2011年 1月号  

 7年前にナルク10周年を記念して実行した東海道ウォークは2506人が参加いたが、を完歩したのは6名に過ぎなかった。
▼15周年の中山道ウォークは同じような距離であっても山坂ばかりで、碓氷・鳥居・和田と言う最大難所の峠越えがあったにも拘わらず、完歩者は20名と多かった。お互いにいたわり合ったりナルクの行進旗を交代で持ったり、東海道の時以上に絆が深まり、遂に同窓会がつくられ昨年は函館で第1回、第2回は今年6月に銚子で行われる
▼世話役はどれも拠点から参加した完歩隊員
▼ユニトピア篠山で二泊三日の勉強をする次期リーダー養成研修でも北海道の拠点参加者で同窓会が生まれ、今春集まって結束を強める。
▼リーダー養成研では@基礎を徹底的に学ぶAヤル気を持つB学ぶ中で同志を得る。そして実践を積みリーダーシップを身につけてもらう
▼日本も今年は命をかけて国をリードする指導者の出現が待たれるが果たして。(高畑 敬一)