2009年12月号

 ナルクの会報10月号の一面で北海道中標津の「ひとり暮らし高齢者の見廻りたい」が紹介されたが「孤独死」が社会問題視されている中で大きな反響を呼んだ。.枚方と茨木拠点が早速「是非自分たちも取り組もう」と声明を出したのをはじめ、ナルク拠点や会員個人そして社協や行政・大学などから問い合わせが殺到している
▼そこでナルクでは「孤独死予防」活動を全拠点に広げるため12月9日関西地区役員研修会に中標津の西井副代表を招いて「取り組みの経過、活動状況など」を話してもらう。関東地区でも研修会を開き、来年事業計画の新しい目玉として提案したい
▼この原稿を書いている最中に東大阪でナルク初めての孤独死が発生した。コーディネーターを務め率先して時間預託ボランティアに励んでいた彼女が約束の時間に現れないので訪ねたら脳出血で倒れた3日後だった。.享年65歳。子供・兄弟無し。まだ若いと思ってお互いに緊急時のことを考えていなかったのが悔やまれる。(高畑 敬一)

2009年11月号

 日本が、人口を維持するために必要な「合計特殊出生率」2.08を切ってから久しく。今や1.03前後にまで落ち込みイタリアや韓国と最下位を争っている。
▼これでは社会保障が持たないと民主党新政権は出生率を上げるために「こども手当」を出すという。他国でも打たれた手で幾ばくかの効果は期待されよう。
▼しかしナルクが調査に出かけて知った鹿児島県和泊町(出生率2.5%で日本一)の例では「いつでも入れる低料金の保育所」「お母さんと乳幼児を一緒に遊ばせる広場」などの行政の施策と「子供はみんな町の子」というコンセンサスを作る地域環境づくりがもっと大切である。
▼更に見逃してならないのが「晩婚化」と「未婚率の上昇」である。ナルクは2年前から「HOW縁結び」を創ったところ150人以上の申し込みがあって、この度東京と枚方、岐阜と大阪の二組のカップルが誕生した。この目出度さをもっと大きな輪にしていきたい。(高畑 敬一)

2009年10月号

 故人が書き遺したエンディングノートに沿って執り行われた葬儀に初めて出席した。僧侶の読経など一切なく、生前親しかった友人がハープで「故郷」「赤とんぼ」「千の風になって」などを次々に奏でる。参列者がそれぞれ花を1本供えた後、長男がナルク エンディングノートノートを読み上げた
▼「私の経歴・思い出」欄では70歳で生涯を終えるが、労働運動、婦人運動の後ナルクで十余年ボランティア活動をし、苦しいこともあったが人様に尽くして得られる喜びの方が大きかったと我が人生を語り、「遺す言葉」では先ず自治会の方々にお世話になった礼を述べ、次に夫へこよなく愛してもらった感謝の言葉、教職に就いてる長男には「もっとしっかりせいや」と励まし、次男には「あまり気張りすぎないで」と気遣い、孫たち・親戚の人たちにまで書いていた
▼故人の名は鈴木美枝子。ナルクで2番目の枚方・交野拠点をつくった時、真っ先に参加し長い間副代表を務めながら在宅介護に誰よりも熱心だった。    (高畑 敬一)

2009年9月号

 富山県社会福祉協議会から依頼され「いきいき長寿大学」の基調講演を富山と高岡で2日間にわたって行った。聴講生がいずれも熱心なのに感動したが「学んで行わざるは無学に等し」と受講後に社会貢献の行動を起こすように訴えたが、どんな結果を生むか注目したい。
▼時間が半日空いたので最近話題になっている映画「剱岳・点の記」と「おくりびと」を観た。いずれも富山県に関係深い作品。前者は新田次郎原作で明治40年の物語だが、前人未踏の険しい剱岳に挑むシーンと春夏秋冬の立山連峰、シェルエットに浮かぶ富士山の魅力に心を奪われた。
▼アカデミー外国映画賞を受賞した「おくりびと」の元本は「納棺夫日記」で、著者は青木新門。故郷富山で葬儀社に勤め、実際体験したことを小説にしたという。
▼昔は家族で納棺をしたものだが、母の時は葬儀社員が手際よくやってくれ妙に感心させられた。開発者青木さんに礼を言わねば。画面に手を合わせて拝んだ。(高畑 敬一)

2009年8月号

 アメリカの金融大恐慌に端を発した世界同時不況は日本の経済にも深刻な影響をもたらし、とりわけ「非正規労働者」の雇用が失われて社会不安を招いている。彼らの生活を支援し、雇用創出や就労を援助する資金カンパを要請したところ「年金自体が目減りしている中でナルクのやるべき事ではない」といくつかの拠点から反対意見が寄せられた。カンパは個人に対しては強制でなく任意であり、拠点として実施するか否かも自由でよろしいと答えて納得を得た
▼結果は27拠点が実施し44万円弱の浄財が寄せられた。そして口々に「私達の現役時代、非正規社員は限られ、安心して働けたし努力すれば報われた。今の若い世代はかわいそう。自分達の生活を切り詰めても被害者を助けてあげたい」と言うのである
▼分かち合ってみんなで生きていく心は大切にしなければならないが、新しい雇用を創出するために経営者・労組・政党が知恵と力を合わせることの方が先であることを強調したい。(高畑 敬一)

2009年7月号

 何故か山陰地方だけナルクの拠点が生まれなかった。半ば諦めかけていたときに鳥取に拠点ができ、待っていたかのように益田、浜田と相次いで誕生が続いた。
▼その鳥取拠点の創立1年の定期総会に記念講演のために出席した夜、生まれて初めて数千匹のホタルが淡い緑色の光を発して群舞する幻想的な風景を目にすることができた。場所は旧鳥取城があった岡に近い樗谿公園。生い茂った木々の下を小川が流れる絶好の舞台。月明かりもなく足下さえおぼつかない闇の中を沢山の市民が家族連れで、あるいは恋人同士でそろりそろりと歩いている。公園の入り口で数匹見つけて喜んでいたらナントなんと奥へ進むにつれ数が増し、谷の下から山の中腹まで舞い上がり数え切れない
▼ホタルの番人と呼ぶ人を中心に有志が10年前から育成を始めた。エサのカワニナを育て、草刈り・ゴミ拾いそして夜回り、成功の秘密はホタルに熱中。それが答えだった。(高畑 敬一)

2009年6月号

 大阪から東京までの東海道を歩き通した体験は労組委員長時代の46歳と74歳のナルク10周年の2回。79歳になって中山道を20人のナルク会員と一緒に1ヵ月をかけて歩くことになった。東海道と異なり、中山道は標高1600bの和田峠を頂点に坂道が多く、雨にたたられて歩行には困難を極めた。しかしそんなに疲労を感じなかったのは何故か
▼景色が素晴らしく、古い町並みや素朴な人情に触れ、沿道に点在するナルクの拠点の人達が何度も下見をして道案内と荷物運びをしてくれ、看護師の資格を持つ会員が乗った伴走車まで用意してくれたおかげである
▼前回の10周年は、社会貢献をする元気な高齢者として、多世代連携を訴え東海道を歩いた。歩きながら拾ったゴミは4トン
▼今回は「エコとふれあい」がテーマ。20箇所で植樹をし、高齢者施設では入居者の方々と交流し喜んで貰った。「旅は道連れ世は情け」の格言を身にしみて感じた3回目の旅であった。(高畑 敬一)

2009年5月号

 日本経済新聞の文化欄に記載押されている「私の履歴書」は学者・文化人・経営者・政治家など1流と称せられる人たちが自分の生い立ちを語り、大きな影響を与えてくれた恩人の話、事業の成功・失敗談を赤裸々に披露し根強い人気がある
▼平成17年に人間国宝で歌舞伎役者の坂田藤十郎が、次いで平成20年、元宝塚スターで参議院議長を務めた扇千景が「私の履歴書」に登場、内容もさることながら夫婦ともに登場するのははじめてのことだったので話題を呼んだ
▼二人の内容をまとめた「夫婦の履歴書」が出版され、私の手元にも送られてきた。貴重な本なので、今年1月末、歌舞伎公演中の坂田藤十郎丈を楽屋に訪ねサインをねだった。
▼そのときナルクが15周年を迎え、中山道を1ヵ月かけてエコウォークをすることをお話した。強い賛同をいただき出発式で奥様が激励の挨拶をされ、雨中のウォークに参加されたのは、このときの約束によるものである(高畑敬一)

2009年4月号

  ナルクが時間預託制を始めてから15年になる。同じ頃、同じシステムを採っていた有償ボランティア団体もあったが上手くいっていなようだ。原因は住んでいる町でしか使えないとか、マニュアルもなく、事務管理も不適確のためだ。
▼預託制実施の初期は平均年齢62歳・男女半々の構成比だったけれども今は65歳。女性が16%多い。預託を引き出して利用する会員、それも女性が増え、なかには使い切ってしまった人も目につくようになった
▼そこで時間預託委員会を開いて「拠点に申請して運営委員会の了解を得られれば個人別奉仕時間台帳の3割の範囲内で時間預託に切り替えて使うことができる」と決めた。但し条件付きで、奉仕時間は環境美化・子育て支援などで拠点がコーディネートしたものに限り、個人申請は今後一切含めないこと。拠点の財政に不安がないことなど
▼5月中旬の理事会にかけるが、さて批准を受けられるかどうか。(高畑 敬一)

2009年3月号

 百年に一度の経済危機がやってきた。日本の経営者はいち早く雇用調整に乗り出した
▼最近行われた財界セミナーでレンゴー紙器の会長が何か流行のように雇用に手を付けていると発言し、波紋を呼んだ。レンゴーは非正規社員を社員に登用する方針を打ち出したばかり
▼バブルの崩壊以前、日本式経営は高い評価を得てきた。中でも終身雇用制度はどんなに経営が苦しくても従業員は解雇しない。雇用調整を行うのは本当に最後の手段であると経営者が信念を貫き通し、人を大切にしてきた。これが従業員の企業に対する高い忠誠心を生み、抜群の品質と生産性をあげてきた所以である。
▼それが何時の間にか株主第1で短期の利益を追求する米国式経営を見習っていった。これを許した日本の労働組合にも責任がある。しかし電機連合が今度非正規社員のためのカンパを行うという。会も賛同、千円カンパを決めた。どちらが多く集まるか(高畑敬一)

2009年2月号

 納めた年金の保険料に対して受け取る給付額を比べてみると、若い人ほど少なくて損をするなどと、殊更に世代間の対立をあおり立てる議論が横行した頃、NPO法人ナルクは創設10周年を迎え、記念イベントを東京日比谷公会堂で実施することになった。テーマを何にするかと考えたが迷わず「多世代共生」決めた
▼年金も医療も介護も日本の社会保障制度は、若い世代が順送りに高齢世代の面倒をみんなでみる「世代間の助け合い」趣旨から成り立っている.この基本的精神を壊すようなことは絶対許されない。但し既得権利を主張しているように誤解されても困る。行動で示そうと大阪〜東京を一ヶ月ゴミを拾いながら歩き続ける東海道五七次ウォークを敢行した。元気な高齢者になって社会貢献する生き方を示すこのキャンペーンに老若男女2500人が参加した。
▼あれから5年がたった。今度は中山道533qを植樹しながら歩く。テーマは「エコ・ふれあい」。ポスト京都議定書の国際的取り決めが成ることを願い、緑を増すことを訴えて、皆で歩きたい。(高畑 敬一)

2009年1月号

 昨年も10ほどの拠点設立総会に出席した。 その中で最も感動を覚えたのが鳥取。 立ち上げの中心になり、初代副代表に選ばれた西村美津子さんの「三人娘」から届いた祝電が読み上げられた時だった。
▼お母さんへ。ナルク設立おめでとうございます。 お母さんがお祖父ちゃん・お祖母さんの介護期間中に私たち三人は結婚していきました。 その頃のお母さんが私たちのため、お祖父ちゃん・お祖母ちゃんのため、日々活躍していた姿をしっかり覚えています。 その苦労が設立へと実を結んだのではないでしょうか。 私たちも子育てが落ち着けばナルクの会員になろうと話をしています。 ナルク鳥取が世代を継がれて末永く発展されることを願っています。 本当におめでとう。 三人の娘より
▼今年は設立15周年のめでたい年。 昨年以上に新しい拠点が続々と生まれる予感がする。大阪・東京・奈良・四条畷・湘南・美幌・浜田・等々に。そして鳥取のように団塊世代から団塊ジュニアへとナルクが受け継がれていく展望の開ける年になりそうだ。
(高畑敬一)