2008年12月号

 枚方市(人口40万人)の社協が把握しているボランティア団体は90、そのうち事務局を持っているのが2、コーディネーターを持っているのが1団体のみだった。 ほとんどが1発イベント型なのである
▼ナルクは、如何に年を重ねても自立して生活し、ボランティアをさせていただいて「生き甲斐」と「健康」を頂戴しようとの理念で設立された。 そうなると継続型のボランティア団体でなければならないと、本部と地域拠点には必ず事務所を置き、コーディネーターを設けることとした。 会員のボランティア活動が長続きするようにと時間預託制を考えた。「時間預託」は他人や社会に尽くした記録であるが、万一の時にそれを引き出し、電話1本で助けてもらえる「安心の制度」でもある。全国ネットなので遠く離れて暮らす親にも使える魅力にもなっている
▼12月から北海道中標津拠点でヘルプマップ(仮称)を開始する。 一人暮らしで生活に不安を感じ始めた会員に担当者をつけ、電話で安否確認、様子見訪問を行い緊急時に対応する。成功すれば全国に広げ、ナルクの新しい「魅力」にしたい。(高畑 敬一)

2008年11月号

 ナルクは来年設立15周年を迎え、5月25日に市立京都会館で全国から2000人余りの会員が集まって盛大な記念総会やイベントを繰り広げる
▼このところ各拠点でも10周年・5周年の記念式典・行事が行われるようになり、できるだけ都合をつけて出席しお祝いの言葉を述べることにしている。その機会に古くから熱心に活動をされている顔見知りの会員を見つけては言葉をかけるのを常にしているが、最近「歳を取ってきて身体が弱りボランティアをできなくなったので退会しようかと思っている」と答える人が増え、気にしている
▼確かに15年も経つと、設立当初60歳代だった人は75〜85歳になる。PPKの生涯を心がけていても病に襲われたりする。でも一寸待ってほしい。これからがナルクに入っていて良かったとの実感が持てる筈である。せっかく貯まった預託点数を遠慮なく使って、素直に会員に助けて貰えばよい。体力が落ちてもやれるボランティアはある。いやボランティアはしなくてもよいから、気の許せる会員仲間と話をする。大きな声を出して唄ったり歩く。趣味の集いで楽しむ。そうしたら絶対に認知症にならない。但し、胸を張ってそういえるために団塊の世代以下の若い会員を増やさねば。  (高畑 敬一)

2008年10月号

 ナルク会員のニーズに応えるために作ったエンディングノートを一般市民の方々にも有料でお分けするようにしたのが2003年3月。総販売数が今春10万部を超え、なお毎月500部程度売れていた。それが9月4日朝日新聞全国版に紹介されると翌日から注文が殺到する。10日間で6000部も発送。在庫が切れて慌てて改訂版を印刷しなければならない騒ぎにまで発展した。人生のエンディングを考え、元気な内にそれを書きとどめておこうとする人が如何に多いことかを知らされている
▼以前に行ったナルクの調査によると ナルク エンディングノートを買い求めて既に記入している人のうち、最も多かった欄は延命治療・病名告知・臓器提供・献体で81・6%(女性は86・7%)2位は介護・看病についての私の希望。3位は葬儀方法や費用についての私の指示であった
▼別の調査では延命治療を望まない人が89%(女性は94%)に上るが、その対応をしていない人がほとんど。生前に自分の意思を明確に書き、捺印して家族・医者に示しておけば人工呼吸器を外しても法的に問われることは先ずない。そんなことが分かってくればエンディングノートを活用する人がもっと増えるに違いない。    (高畑 敬一)

2008年9月号

 国連の定義によると、高齢者が全人口の7%を占めると高齢化社会と呼び、14%を超えると高齢社会となる。この7%から14%に達する高齢化のスピードが日本は世界で最も早く24年だったが、台湾では23年と更に短くなってその記録を更新することになると言うので今から大わらわ
▼介護保険の導入が検討され「元気で呆けない高齢者づくり」と「ボランティアの奨励」に力を入れている。日本からナルクの代表を招いて「時間預託の仕組みと実態」を学ぶセミナーを開いたり、台湾全土に46の拠点を有して高齢者支援のボランティア活動を行っている「中華民国弘道志工協会」との交流をセットしたのもその一助である
▼この協会の本部を訪れたら84歳の頼さんが濃いオレンジ色のポロシャツを着て出迎えてくれた。胸に「挑戦八十・超越千里」背には「不老騎士」の白文字が入っている。80歳以上の老人が台湾一周の千里(4000km)をバイクで走ったときの団長。2週間で完走の企画をした林依事務局長がヒントはナルクが10周年記念で実施された東海道1ヶ月600Km完歩ニュースだったと明かしてくれた。地球温暖化防止と元気な高齢者づくりのためには歩いた方がよいとすすめてきたのだが・・・。   (高畑 敬一)

2008年8月号

 出版不況のなかで、ひとり気を吐いているのが新書版。その代表的なものがお茶の水女子大の藤原正彦教授が書いた「国家の品格」である。新潮社発行、680円で263万部売れている。このあと坂東真理子さんが「女性の品格」という本をPHP社から出版したら同じように大ヒットした
▼「品格という名前を付けたら売れる」そんな噂が流れるなか、枚方市の本屋を覗いてみたら「品格本」がずらりと並んでいた。「親の品格」「男の品格」「日本人の品格」「横綱の品格」「老舗の品格」・・・その数12を超えている。パラパラと目を通したが、印象に残ったのは「国家の品格」だけ
▼「当店のベストセラーのトップです」と店員が勧めてくれた石浦章一著「いつまでも老いない脳を作る10の生活習慣」の方が魅力に溢れていて一気に読み終えた。10カ条のうち@週2、3回30分以上のウオーキングA腹8分目B目標を持つC好奇心をもち新たなことに挑戦D人とのコミュニケーションE本を読む習慣、の6カ条は守ろうと思った。(高畑敬一)

2008年7月号

 松下電器で月一回開かれる役員会の昼食は創業者幸之助が生存していた頃は必ず吉兆の料理が出されていた。予め本店で造られたものを本社に持ち運び一部温めて配膳していたがそれは新鮮で美味だった。「忙しい中を割いて出席してくださった社外重役の方々に心づくしのもてなしを」と考え抜いた幸之助が日本料理では大阪(後に日本)ではトップと言われるようになった吉兆の料理を差し上げることに決めたのだと聞かされ感動したものだった
▼その吉兆がお客が食べ残した料理の品を次の客に盛りつけなおして出していた事実が内部告発で発覚した。松下幸之助が生きていてこのことを知ったらどんなに嘆き悲しんだことだろうか
▼富山県にセト電子工業という従業員100人足らずの企業がある。社長はあのノーベル賞受賞者の田中さんの先輩で島津製作所出身。リアルな生産進行状況やJRの情報告知を電光表示する機器をソフトを含めて提供し品質が売り物。その秘訣は全員が週一回QCサークル活動に参加し品質の改善改革を着実に実現していることである。四ヶ月に一回土曜日一日を掛けて行われるTQC発表会には社長が必ず参加し優秀サークルに金一封を出して讃えている。品質とはトップの意思である。(高畑 敬一)

2008年6月号

 『20年間人工透析をしながらボランティア活動を続けてきた父でしたが最後は病院で家族に看取られながら75歳の生涯を閉じました。人工呼吸器を付ければ今少し生き長らえられ、呼吸も楽になると進められたのですが、「お前達と話ができなくなる」と頑として受け付けませんでした。多分延命治療は医療費の無駄遣いという心があったのでしょう。立派に生き抜いた父を尊敬します。』お通夜の席に感動の渦が流れた
▼この父こと斉藤親生さんは新日鉄が最新鋭の製鉄所を千葉県君津市に創ったとき八幡から集団で移ってきて間もなく労組委員長に選ばれた。信念と行動の人として尊敬を集めると共に面倒見の良さで愛されもした。定年後、NPO法人ナルク千葉県拠点設立の中心になってから「行政単位毎に拠点を分離独立させる」ナルクの基本方針の先達を進んで務め8拠点を築いた
▼後期高齢者医療制度の中で「死期を僅かに延ばすために五百〜一千万円の終末医療をしないよう誘導した医者には二千円の特別報酬を与える」が批判の一つになっているときに、自分の強い意志で延命治療を排除した人がナルクに出てきたことを誇りにしたい。そしてこれを世に広げていきたい。
    (高畑 敬一)

2008年5月号

 もう故人となったアメリカの著名な経済学者ドラッガーはNPOにも造詣が深く、著書や講演のなかで「企業の経営よりNPOが大切にすべきなのは明確な使命(理念)を持つことである。結果として組織が一つにまとまり、一人ひとりが何をすればよいかを理解する」と強調されている
▼宗教と政治と商売に利用しようとする人を除き、誰でも入会できて平等の権利・義務を有するナルクのようなボランティア組織が成長発展するためにはこの「使命(理念)」に加えて「すぐれたリーダーシップを持つ指導者の存在」を挙げなければならない。後者を強く意識したナルクは、近い将来各拠点を背負ってたつリーダーを養成しようと毎年合宿研修を行ってきたが、受講生の半数以上がリーダーの座につき拠点の活性化に着手して目を見張るような成果を上げている
▼また起居を共にして深更まで互いに拠点活動の悩みを話し合った受講生達が「ナルクは一つ」の心を共有するに至っているのも大きな変化である
▼これを踏まえ、ナルクの新事業計画案に「拠点の先駆的活動が資金難で中断しないようナルク全体で支えるための連帯基金をつくる」提案をした。資金にゆとりを持っている拠点や会員有志からの寄付金が「ナルクは一つ」の合い言葉で基金に寄せられると信じて。
    (高畑 敬一)

2008年4月号

 「( 前略)私の弟の岳父は岐阜県養老山系の麓に住んでいたが、1月10日に入院した。重症で24時間不眠不休の付き添いが始まった。ところが勤めをもっている者ばかりで、2日以上続けることは耐えられず家族一同前途暗澹たる状態に陥った。この時弟の義兄が『ナルク大垣』があることを知り、相談に行くと、代表・副代表が懇切に対応してくださり、彼が会員になるだけで、早速支援を始めてくださった。24時間1分の隙もなく、見事なバトンタッチで、父が息を引き取る日まで見守ってくださった。本当に助かった。こんな立派なボランティアの会はない。ぜひ会長にあってお礼を言いたい、と義兄は涙を浮かべながら語っていた(後略)」
▼差出人は現役時代、仕事で苦労を分かち合った旧友。世間は狭い、我がナルクが古き友の1族を助けることになろうとは。それにしてもナルクの大垣は立派。すぐに山田代表にお礼の電話を入れた。旧友も夫婦で早速入会の手続きをとってくれた。   (高畑敬一)

2008年3月号

  最近の子供達で一番気になるのは我慢できない子、壁にぶつかったときに自分をコントロールできない子が増えていること。学校でも「心の教育」の充実を図っているのだがそれだけでは・・・。某小学校長から聞いた話。確かに「すぐに切れて親や学友を殺傷する」事件が絶えない。核家族化で祖父母と住む子供が減り、少子化で兄弟に揉まれることもなくなって、叔父・叔母もいない。その結果家庭で人間関係を築く力がきわめて弱くなっている
▼ところが第一生命経済研究所が「子供が身につけてほしい能力や態度」について、学校か家庭教育のどちらに期待するかを調査したところ「周りの人との関係を上手く作ること」の項目では、圧倒的多数が「学校教育に期待する」と答えた。家庭は僅か11%に過ぎなかった
▼小学校時代は人間形成にとって大切な期間。それを学校のみに頼るという今の親の意識は問題である
▼我慢する忍耐強い心、明るい挨拶ができて他人を思いやる逞しい子は家庭における幼児からの躾がなければ育てにくい。更に人間関係づくりには子供達が安心して外遊びができる環境を地域社会みんなで再構築することも欠かせない条件である。 (高畑 敬一)

 2008年 2月号

  松下電器では年間を通じての最大の行事が1月11日に行われる経営方針発表会。過去1年の経営実績を総括し、それを活かして新しい年の経営の進め方と留意すべき点・売り上げ・利益目標を社長が発表する。会社が小さかった頃からの伝統になっていて創業者松下幸之助は必ず年末から発表会の前日まで一室にこもって構想を練ったそうだ。自分の考えを直接聞いて実行に移して貰えるチャンスだからと経営幹部だけでなく会場の許す限り一般社員を多く集め一時は八千人前後に達する年もあった。今は全世界の工場・営業所・研究所等にテレビが設置され数万人の松下グループ社員が衛星中継で見聞きする
▼小さくなった会場で大坪社長が「日米欧だけでなくブリックスプラスベトナムを含めたグローバル市場で勝つためブランドイメージを高めたい。そのため社名・ブランドをパナソニックに統一する」との大胆な方針を示した
▼「ナショナル」「松下」に愛着を持つ層から心配の声が上がっているしかし社員は感動して燃えている。マスコミも好意的で、日経、朝日は社説で激励をした。何よりも心強いのは経営陣が不易流行の不易に「創業の心」を掲げ松下の強みとして実践することを誓ったこと。松下をはじめ各社が経営の原点に戻り社員力を高めて再び強い日本企業を築いてほしい。(高畑 敬一)

2008年 1月号

 初春大歌舞伎が今年も1月2日から松竹座で幕を開けた。すっかり定着して東京歌舞伎座と同じように正月気分で芝居を見られるようになってファンとしてこんな嬉しいことはない
▼振り返ってみると昭和34年(1959年)皇太子の結婚ブームでテレビが爆発的に家庭に入りだして以来、映画も演劇も影が薄くなっていったが、歌舞伎の惨状は目を覆うばかりで、関西では京都の南座の「顔見世」を除いて一切歌舞伎の公演が行われない。これではならじと昭和54年(1979年)「関西で歌舞伎を育てる会」を小松左京さん等と旗揚げして懸命に歌舞伎の復興に努めてきた。それが実りだしたのである
▼ナルクでは新春早々に近江の堅田周辺で我が国初の「シニア介護サポーター養成講座」がスタートする。企画・進行・講師を務めるのは昨年末に本部で特訓を受けた「びわこ湖西拠点」の4名のインストラクターの皆さん。代表や運営委員あげてげて支援態勢をとり、4日間のカリキュラムを特製テキストでこなす
▼特養での一日実習(入浴・食事介助)、ベッドや車イスでの実習もあって「自分が介助する、或いはされる立場に立ったときに役立つ」「ボランティアでもこれくらいの理論とスキルは身につけておきたい」と会員からは好評。初夢でこの講座が地域住民に広がり厚労省のモデルに採用された。 (高畑 敬一)