2005年12月号

 我が家の愛犬の名は「ヨーゼフ」。名付け親は次女。犬種はゴールデンリトリーバー。大学を卒業して客室乗務員に就職が決まった記念にと貯金をはたいて買ってきた。幼少のみぎり、訓練所に2度預けた故かすこぶる行儀がよい。一犬吠えて万犬吠える事態が生じても絶対にそれに与しないのは偉い。と妻は褒め立てる
▼散歩役は専ら吾輩。大型犬なので1分間120〜130歩とほどよいウォーキングペースになって朝夕40分続けている。昨年東海道五十七次を完歩できたのも「ヨーゼフ」のお陰と感謝している
▼散歩コースの途中に宅地を造成したまま家が建っていない空き地がある。一角を借りて定年退職者が野菜作りを始めた。暫く経って隣で一人、また一人と次々に同調者が出てきて今や四人。時々言葉を交わし合う。
▼雑草を刈る手間が省けるので、地代を無料にしてもらった。粘土質だから土づくりから始めた。百姓は初体験。誰にも教わらず本を読んでやっている。などと聞かされていたが、先日とれたてのジャガイモを頂戴した。北海道の男爵と同じ美味しさ。基本に忠実だったら何でもできるのだなあ。と感心することしきり
▼景気回復で周りに家が建ち並んでしまい「いつまで続けられるやら」と心配そう。ナルクで生きがいを、とすすめているのだが。(高畑 敬一)

2005年11月号

  団塊の世代が2007年から定年を迎える。
雇用にどんな影響をもたらすのか?消費はどうなるのか?地域での参加意識は?等と、堺屋太一・加藤仁をはじめとする各界の論調や予測記事が目立つようになってきた。
しかしその論拠としての「団塊の世代を対象に、客観的な調査をした上でのデーター」を基にしたものは数が少なく、それもせいぜい東京・大阪圏だけで、サンプル数も限られていると思われる
▼NPO法人ナルクは全国規模で4400人。
団塊の世代だけでなく、その前後の50歳代と定年アフターの60歳代・70歳代も対象にして、定年後の生活意識・行動を比較できる調査を行い、その報告書を出版・販売した。
企業・行政・学界などから多数の注文を受けているが、最近はもっと詳しく調べたいので「生データー」が欲しい。
との追加注文に応じている。その中から寄せられた一文を紹介しよう
▼定年アフターよりも団塊の世代が地域でボランティアやNPOに参加する意識は高いが年金不安も高いので、定年後も働く比率が70%。
だが、定年延長でなく、自分の特技・資格を活かして新たなところで働きたい。それもフルタイムではなくて、地域活動・趣味・旅行の三位一体で。
のデーターに驚いた。(高畑 敬一)

2005年10月号

   一人暮らしのお年寄りや家に引きこもりがちの老夫婦を集めて10時から3時まで週3回、ずっと続けてきた東大阪市の街かどデイハウス「みんなで楽しも会」が設立5周年を迎えた。ボランティアでお世話をしてきたのがナルク東大阪「めざめ」
▼1日を楽しく創造的に過ごせるよう「はがき絵づくり」「生け花」「パソコン」「習字」「朗読」「手芸」「健康マージャン」など日替わりの「メニュー」を担当する会員。マイカーで送迎したり昼食をこしらえて配膳する会員等々。ずいぶん苦労が多かっただろうにと記念イベントの席で尋ねると「自分の趣味や特技を活かせるのでこちらが元気をもらえる」と嬉しそう。何よりも40人余りのお年寄りの表情が活き活きとして朗らかだったのが印象的
▼市から助成金を頂く収益事業になったので、拠点会計と切り離しての「独立採算制。ここで働く会員は時間預託点数をもらって人件費分は拠点に寄付している。「めざめ」の事務所は広くて立派で駅に近い便利なところにある。その事務所の運営経費の調達にも大きな貢献をしているのである
▼会場を沸かしたのが友情出演のハワイアン・フラクラブのおばさん達。はだしで腰をよく振るせいか一回り若くまぶしく見えた。(高畑 敬一)

2005年9月号

  7月道頓堀松竹座での中村勘三郎襲名公演は連日の猛暑続きにもかかわらず大盛況。松竹座始まって以来の大入り満員となった昨年の市川海老蔵襲名公演を上回る人気と熱気に包まれて千秋楽を迎えた
▼「口上」で勘三郎は「若い頃、大阪の朝日座・中座で大役を与えられ懸命に励んだことが今いきている」と述べていたが、勘九郎と名乗っていた時代、関西で歌舞伎を育てる会が「船乗りこみ」を復活させたり「歌舞伎の魅力」と名付けて「解説」を演目に入れその中でお客を舞台に上げ、馬や駕篭に乗せるなど歌舞伎ファンを作るための新しい試みに積極的に参加していた。その体験から「お客様が喜ぶ芝居とは何か」を常に考えるようになり、平成中村座をつくったり、「研辰の討たれ」という芝居を生むようになったのではないか
▼近くの国立文楽劇場では勤労者を新しいファンにしようと夜の部を7時からにし、演目を1つにしてその前段に人間国宝の竹本住太夫が自ら「文楽を語る」というトークショーに出た。これが当たって通路に椅子席を設けるほどの騒ぎ。「初めて文楽を見に来た人は手を挙げて」と住太夫が尋ねたら7割が初心者だった
▼さてナルクは会員が増えるためにどんな工夫をしたらよいだろうか。(高畑 敬一)

2005年8月号

 業界に先駆けて中国に4カ所の営業店を開設し、いずれも順調に発展させている友人のイトーヨーカドー・塙昭彦役員が63歳を迎えた。先ほど発生した反日デモにめげないで住居を北京に移し、中国の為にまだ働き続けると言うので“激励”の所存で【東海道五十七次・ナルクウォーク記録本】を贈った
▼旬日を待たずして長文の返書が届いた。75歳で600kmを1ヶ月かけて歩き続けたこと。それ以上に数多くのサポーターたちがウォークを支えながら参加できたことに感激している姿に感動した。自分自身「年だなぁ」と思う昨今だったがこの本を読んで「もう少しがんばってみるか」と勇気を与えていただいた。この本を永久保存し、いつの日か家内と一緒に東海道の何処かを歩いてみたい。と書いてあった
▼“企業は人なり”で中国事業百年の計のために一人でも多くの中国人をすばらしい人物に育て上げるのが自分のこれからの使命だと彼は決意している
▼日中の国交関係がギクシャクしているが日本企業の中国進出は大小を問わず数え切れない量にのぼっている。これらにすべてがヨーカドーのように行動すれば、日中間は民間ペースで著しい改善を遂げることができよう。
         (高畑 敬一) 

2005年7月号

 クールビズのネーミングで実施された官公庁の軽装(ノーネクタイ・ノー上着)運動初日の模様がTVで一斉に報道された。「隗より始めよ」で模範を示した小泉総理のシャツ姿が一番印象に残っている。
「2500円で買った既製品だよ」と言っていたが・・・
▼翌2日、厚労省で「勤労者マルチライフ支援事業推進会議」が開かれるというので「クールビズが霞ヶ関のどこまで実行されているのだろうか?」興味津々会議に臨んだ。ところがお役人は全員ネクタイをはずしての白いYシャツ姿。机上に「軽装励行期間の実施について(依頼)」と題された大臣官房人事課通達のコピーが配られている
▼冷房温度は上げられているので蒸し暑い。スーツ姿の委員側が急遽軽装に切り替える始末。ここは官僚に脱帽。期間は9月30日までとなっているが、ぜひ毎年、末永く続けてほしい。そして民間企業も全社実施し、日本の盛夏の風俗に仕立ててもらいたいが、会長・社長が率先して励行しないと定着は難しかろう
▼さて勤労者マルチライフ支援事業は厚労省が平成13年度から始めたもので、勤労者がボランティア活動に参加して視野の広い人間になることを奨励する。そのため府県を指定して予算を付け、地方経営者協会と社協とNPO支援センターの三者で推進会議をつくって啓発や活動紹介をしている     (高畑 敬一)

2005年 6月号

▼JR福知山線で起きた大事故は、死者107名のうち大半が前途に夢多き若い人たちだっただけに悔やまれてならない。残された家族の無念さは如何ばかりか。ご冥福をお祈りする。事故当日JR職員がボーリングをしていた、宴会をしたのはけしからんとマスコミが騒いでいるが、そんなことより今後このような事故が絶対起きない対策を立てさせることが第一である
▼人間はどんなに注意していてもミスを犯すことがある。航空機はそんな場合に備えて副操縦士をつけている。一人しか運転台におかないのなら、ミスをしても精巧な安全装置が働いて事故を防止するようにしておくことだ。
▼一九五〇年頃、家電の製造現場では命を落とすような事故は起きていなかったが、プレス作業者は指を二,三本落としているのが当たり前というほど、小事故が続発していた。それらをすべてゼロにするため、労組も参加して安全運動が起こり、今では無災害を競う職場になっている
▼JR西労組が記者会見で、第三者のような発言をしているのは遺憾で、まず頭を下げて「事故を未然に防ぐ力が足りなかった」とお詫びすべきである。ライブドア事件で「企業は誰のものか」が問われたが、「株主」と「従業員=労組」との共同のものだと思う。そう考えてやってきたのが日本式経営の良さ強さである。   (高畑 敬一)

2005年 5月号

▼ゴミを拾いながら楠正成の史跡巡りをするというので、千早赤阪拠点へ朝早く出かけた。地下鉄が心斎橋駅に到着したとき、後方座席から近寄ってきた若い美人がしきりに目配せをして「降りましょう」と合図する。「はて、この女性は誰だったかしら?」と躊躇していると「女性専用車ですよ」と小声で伝える。はっと気が付いて急いで前の車両に乗り移った
▼混雑する通勤電車の中で発生する痴漢行為から逃れるために、関西私鉄や地下鉄・JR各路線が近年始めた乗客サービスであるが、著しく成果を上げたので、このところ関東各路線に「女性専用車」を設けるサービスが広がっている
▼バリアフリーからユニバーサルデザインへと世の中が大きく転換している時代に「女性専用車」というバリアをつくるのはどうかなぁ?と考えてしまった
▼一方、枚方市・ボランティア・フェスティバルではオープニングで演奏された「ヘルマンハープ」に感動させられた。ドイツの農場主ヘルマン氏がダウン症の息子アンドレス君のために開発した弦楽器で、楽譜が読めない人でも演奏できるバリアフリーが特徴とか。今や障害者・高齢者、更に健常者にまで広がっている。あとで体験してみたら童謡からモーツアルトまで弾けることが判った。
                            (高畑 敬一)

2005年 4月号

  山梨県視覚障害者福祉協会の創立50周年記念講演に招かれて甲府へ出かけた。3月のひな祭りがすんだというのに、昨夜は雪が降りしきっていた。それがウソのように今朝は晴れ渡って、続々と障害者の方々が会場に向かっている
▼杖をつき、或いは盲導犬と一緒に、ボランティアに手を引かれてと様々だが、同志だけの集まり故か楽しそうな足取りで、定刻用意された300人の席は既に埋まっている。登壇はガイドされたが、あとは手探りでマイクをたぐり寄せて開会の辞を述べた女性副会長の声は凛として内容も素晴らしい
▼眼以外の五体は全て使うことができるので介助してもらうだけではなく、自分たちも人様に何かしてあげられないかと双方向のボランティアを考えていたら、テレビでナルクの時間預託システムを聞いて共鳴。直接詳しく話を聞くことにしたのだという。ことの次第を知らされていたので90分の講演には熱が入った
▼50年前は「もはや戦後ではない」の経済白書が出る頃で、盲人に対する偏見・差別も多く「弱い者同士、手をつなぎ福祉を要求」から出発した。それが今「自立」「健常者との共生」に向かっている。皆さんの表情は明るい。スポーツも盛ん。文化祭優秀作品の中から「介護者の 説明聞きつつ草花に 手を触れ歩む 高原の秋」    (高畑 敬一)

2005年 3月号

  ナルクの会員向けアンケートで「入会の動機」を尋ねたことがある。
回答で断トツ1位だったのが「ナルク設立の理念・目的に賛同して」だった。因みに2位は「老後に備えて、全国どこでも使える時間預託制度の魅力」
▼どんなに歳を重ねても子供の世話にならず自立し、他人様のために尽くそうと志す者達が集って、お互いに支え合って生きていく地域社会を創ろうというナルクの理念・目的がしばしばテレビ・新聞に報道された。それに共鳴して拠点を創りたいという「一粒の種」が生まれ、全国110の拠点にまで育ってきた
▼全ての設立総会に出席したが、出会いで感じるのは「初対面なのにずっと以前から知り合いであったかのような親しみを覚え、妙に話が合う」ことを共通にする会の魅力である
▼ところが時を経ると人間は初心を忘れる。拠点の運営を巡る些細なことで意見が対立し、感情のシコリが残って退会騒ぎにまで及ぶことがある。こんな場合はナルクの理念に戻って考えるのがよい。どんなに白熱の議論を交わしても気まずくはならない筈である
▼ある拠点で代表の命令調の運営の癖(会社時代からの)が気に入らないと、女性軍がボイコットした。辞めた代表はそれを恨まず、ひたすら活動に精を出している。彼曰く「理念に照らせば私の方が間違っていた」。 (高畑 敬一)

2005年 2月号

  淡路島から出てきた女将が弟と娘・姪の4人で営んでいる小料理屋が大阪ミナミにある。値段の割合に料理が美味しくて家庭的雰囲気があるのでお客の絶え間がなかった。しかし最近になって新規の若い客は居酒屋チェーンに行ってしまい、常連の客は定年を迎えて足が遠のいているようだ。20数年来世話になっている店なので友人を連れて久し振りにのぞいてみたら、女将から「ナルクの素晴らしく良い話」を聞いた
▼近くのマンションに住んでいる知人がナルクの会員で、事情があって3年前に退会した。その後夫を亡くし、自分も足腰を痛めて生活が不自由になって困っている。そこへ会から「あなたの預託点数がこれだけ残っている。再入会されたら使えますよ」との文書が届いた。藁にもすがる思いで電話をしたら、早速、家事援助に駆けつけてくれた。知人は今ナルクに感謝して安心して暮らしているという
▼退会しても預託点数が拠点で保管され、再入会すれば使えることを知らない会員が多い。大阪拠点は全退会者に定期的に「保管点数」を知らせていた。それが実ったのである
▼後日談だが、感動したこのマンションの数名がナルクに入会した。(高畑 敬一)

2005年 1月号

 昨年は日本列島を荒れ狂った自然の前に人間はいかに無力であるかを知らされた年だった
▼年明け早々の17日は阪神大震災の10周年。あのときの破壊され焼き尽くされた形跡は何一つ見当らない。ここでは不死鳥のように立ち直った人間の強さをひとしきり感ずる。中越地震や豊岡豪雨をはじめ被害に遭われた方々の一日も早い復興を、ナルク会員から寄せられた210万円のカンパを捧げて祈りたい
▼一方ナルクの昨年は良いことずくめだった。東海道五十七次・600kmゴミを拾いながら一ヶ月歩き続けたシニア・ウォークを皮切りに、憲政会館・日比谷公会堂を満席にするイベントで涌いた。年間最高の4915人が入会し、19の拠点が誕生した
▼15周年を目指す最初の年は、行政や社協・ケアマネと密接に連携して地域の福祉ニーズを汲み上げて、助け合い時間預託と奉仕型ボランティアを広げたい。自立して元気で社会に貢献するシニアをうんと集めよう
▼市川海老蔵の襲名披露で昨年七月、松竹座は大入り満員が続き、開設以来の記録となった。今年は中村雁治郎が230年途絶えていた坂田藤十郎の名跡を継いで、12月南座で興行する。菊池寛原作「藤十郎の恋」で知られる名優にどこまで迫れるか、今からわくわくしている。(高畑 敬一)